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湯立神楽とは?内容や各地の湯立神楽が見れる場所はこちら

神楽 湯立

神社の神事に「湯立て」というものがあります。祭礼やお祭りで大きな釜を使い、その熱湯を振りまいているところを見たことがある人もいることでしょう。

ではこの「湯立て」とはいったいどんな意味があり、その内容はどのようなものなのでしょうか。

ここではこの「湯立てと湯立神楽」についてご紹介いたします。

後半には湯立てが見れる神社、お祭りについてもご紹介いたしますので気になっている人はぜひ見に行って見てください。神社の行事について興味が湧いてくると思いますよ。

 

元巫女による古式巫女舞をベースにした舞はこちら

湯立と湯立神楽について

湯立てとは?

湯立は、巫女による神がかりの儀式の一つです。神前に大きな釜で湯を沸かし、笹や、幣串を湯に浸して自身や周囲に振りかけます

釜で湯を沸かすのはそれを勧請した神々に対して献上し、また舞を舞う巫女が神がかりとなって神託を行うためです。

古くは禊や、神意を問うための占いの手段としての要素が大きかったことから問湯(といゆ)とも呼ばれていました。

湯立神楽の内容

湯立神楽は神社によってその内容にかなりの違いがあります。玉串に見立てた枝葉を浸して湯を撒いたり、素手で行う神社もあります。また、ご神体を湯につけたり、米や御神酒をいれるところもあるのです。

海辺の神社では釜湯に海水を使ったり、神社によっては釜湯を飲むと無病息災になると言われているところもあり、瓶に詰めて持ち帰ることができるところもあります。

いずれもその願いは無病息災や五穀豊穣を願ったものになります

千と千尋の神隠しのモデル

ここまでのご紹介でジブリ映画のファンの方にはピンとくるものがあると思います。

「千と千尋の神隠し」という映画のモデルになっているのがこの湯立神楽なのです。

映画では、千尋という少女が神々の世界に入り込んでしまい、湯婆婆の経営する銭湯で働きだす。という内容ですが、この神様が疲れた体をいやす銭湯のある不思議な街は、宮崎駿監督が、長野県・遠山郷の「霜月まつり」で行われる湯立神楽から思いついたのだそうです。

霜月まつりの神楽では、八百万の神々に扮した村人が大きな釜の周りを踊りながら熱湯を素手で跳ね飛ばしていきます。

とても特徴的でダイナミックな神楽となっていて一見の価値はあると思います。

この流れで、ここからは各地方で行われている湯立神楽をご紹介します。それぞれ特色があり、見応えのある神楽となっています。

 

元巫女による古式巫女舞をベースにした舞はこちら

各地の湯立神楽

〈神奈川〉白旗神社

こちらの神社は、太古の時代に関東地方を開拓された「寒川比古命(さむかわひこのみこと)」と、「源義経公」が祀られています。元々は御祭神の名から「寒川神社」と呼ばれていましたが、後に源義経公が奥州・平泉で自害したとき、その首がこの地で見聞され、白旗が源氏の旗であったことから、源頼朝公により、白旗明神としてこの神社に祀るように言われ、これより白旗神社と呼ばれるようになったのです。

湯立神楽は毎年10月の終わり頃に行われる秋の例祭で見ることができます。

全部で12の「座」と呼ばれる演目に分けられており、これら全てを行っている神社は全国でも3社だけです。

  • 打囃子(うちはやし)
  • 初能(はのう)
  • 御祓(おはらい)
  • 御幣招(ごへいまねき)
  • 湯上(ゆあげ)
  • 中入れ(なかいれ)
  • 掻湯(かきゆ)
  • 大散供(だいさんく)
  • 湯座(ゆぐら)・笹の舞(ささのまい)
  • 射祓(いはらい)
  • 剣舞(けんまい)
  • 毛止幾(もどき)

こちらは神職が行う「神職舞」が特徴になっています。境内に5色の紙垂(しで)と竹で作られた天蓋(てんがい)を飾った斎場で大釜に熱湯をたぎらせ、湯立ての結晶(湯花)を受けることで災いを除き、福を招くと言われています。

毎年多くの方が参加しています。

〈神奈川〉皇大神宮

第53代淳和天皇の御代、天長9年(832年)に御社殿造立の記録がある神社です。

天照大御神が御祭神となっています。

8月の例大祭で見ることができ、こちらも12座が行われます。産土神・火の神・水の神の三神を招き、無病息災を祈ります。

〈山梨〉美和神社

美和神社は甲府盆地の東部に位置し、一ノ宮の浅間神社、三ノ宮の玉緒神社と共に、甲斐国二ノ宮となっています。中世には武田氏から崇敬を受けていた記録が多く残っています。

御祭神は「大物主命(おおものぬしのかみ)」で、社宝として信玄公が元服の際に纏った甲冑である「朱礼紅糸素懸縅胴丸佩楯付(あかざねべにいとすがけおどしどうまるはいたてつき)」が祀られています。

こちらの湯立神楽では、「猿田彦の舞」「天狗の舞」と呼ばれる舞で四方を祓い清め、釜で沸かした熱湯を笹で振りかけ、無病息災や、五穀豊穣を願います。

〈長野〉正八幡神社

先述した、「千と千尋の神隠し」のモデルとなった霜月祭の行われる神社です。

御祭神は応神天皇と五柱の神となっていて朱雀天皇の承中年間(931年〜937年)に佐久麻呂が熊野本宮の仙人に出会い、五柱の神を勧請したのが始まりです。

霜月に行われていた湯立神楽から霜月祭と呼ばれ、現在は新暦である12月に行われています。

社殿の中央に設けた釜の上に神座が飾られ、煮えたぎらせた湯を神々に捧げます。こちらの湯立神楽は面が使用されますが、これは佐久麻呂が仙人から5個の神面をもらい受けたことが始まりとされています。

〈京都〉城南宮

延暦13年(794年)の平安京遷都の際に都の安泰と国の守護を願い、「国常立尊(くにとこたちのみこと)」「八千矛神(やちほこのかみ)」「息長帯日売尊(おきながたらしひめのみこと)」に合わせ祀り、「城南大神」と崇めたことが創建で、城南とは平安城の南のお宮という意味になっています。

こちらの湯立神楽は、1月に行われ、舞を舞うのは4人の巫女になります。鈴や扇を手にし、祓神楽が舞われます。その後、大釜に神水を沸かした湯をたすき掛けの巫女が笹の葉で勢いよく散らして邪気を払い、無病息災を祈るのです。

〈香川〉垂水神社

垂水神社はその境内に「水垂りの松」と呼ばれる松があり、この木の枝葉が水を含み、滴る露が雨のようになっていたことから、この下に水神様がいると言われ、この名がつけられました。現在ではこの木は枯れ木なり、「時雨松碑」という標石と共に境内に残っています。

こちらは深夜から始まり、明け方にかけて、5柱(地・水・火・塩・かまど)と64柱の神を湯に入れなぐさめ、その後に氏子が残りの火の上を歩くという神事になっています。とても広い境内で行われる神楽は迫力もあり、見応えがあります。

〈愛知〉花祭

花祭は、愛知県北設楽郡に伝承される霜月神楽の総称です。祭りは11月から3月にかけて各地で行われ、様々な舞が舞われます。

こちらの湯立ては神々の湯立てというより、人々の湯立てが中心で、神事としての一面の他にも芸能としての要素も持っており、大きな鬼の面などが使われています。

【まとめ】湯立と湯立神楽について

湯立てとは

  • 巫女による神がかりの儀式のひとつ。
  • 大きな釜で湯を沸かし、笹や、幣串を湯に浸して自身や周囲に振りかけます。
  • 釜で湯を沸かすのはそれを勧請した神々に対して献上し、また舞を舞う巫女が神がかりとなって神託を行うため。

湯立神楽の内容

  • 玉串に見立てた枝葉を浸して湯を撒く。
  • 素手で行う神社もある。
  • ご神体を湯につけたり、米や御神酒をいれるところもある。
  • 海辺の神社では釜湯に海水を使ったりもする。
  • 釜湯を飲むと無病息災になると言われている。
  • 瓶に詰めて持ち帰ることができるところもある。

神楽の中でも特徴的で、起源である巫女の神がかりの儀式にも近い湯立神楽ですが、その熱湯を振りまくという内容から見た目も派手さがあり、芸能として鑑賞しても満足できるものになっています。また、熱湯を被ることで神事に参加できるのも楽しめるポイントでしょう。

ここにご紹介した神社以外でも行っているところは多く、それぞれ特色が違いますのでいろいろな神社で比べて見るのもいいのではないでしょうか。

ぜひ一度体験してみてください。