アニミズムとシャーマニズムの違いと共通点、関連性とは?
アニミズムとシャーマニズム。
何だか似たような意味の言葉に思いますが、どう関連しており、どこが違っているのでしょう?
今回は、この2つの考え方の違いと共通点について、まとめてみたいと思います。
読み終えた時には、しっかりと両者のイメージがつかめるようになります。
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アニミズムとシャーマニズムの違いと共通点
結論からいうと、
違いは
- 「シャーマン」という媒介者の存在
共通点は
- 霊的な存在を認めていること
で、アニミズムの中にシャーマニズムが含まれているといえます。
なぜそう言えるのか。
- アニミズム
- シャーマニズム
の定義について、確認していきます。
≪アニミズム≫
アニミズム(英語: animism)とは
- 生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方
です。
19世紀後半、イギリスの人類学者、E・B・タイラーが著書『原始文化』(1871年)の中で使用し定着させた言葉です。
日本語では
- 汎霊説
- 精霊信仰
- 地霊信仰
などと訳されてます。
アニミズムはラテン語のアニマ(anima)に由来し、アニマは
- 気息
- 霊魂
- 生命
といった意味を持ちます。
では次に、シャーマニズムとは何か、みていきます。
≪シャーマニズム≫
シャーマニズム(英: Shamanism)とは
- シャーマン(巫師・祈祷師)の能力により成立している宗教や宗教現象の総称
- シャーマンを中心とする宗教形態で、精霊や冥界の存在が信じられている
- シャーマニズムの考えでは、霊の世界は物質界よりも上位にあり、物質界に影響を与えているとされる
ということです。
宗教学、民俗学、人類学(宗教人類学、文化人類学)等々で用いられている用語・概念です。
日本語では、巫術(ふじゅつ)と言われることもあります。巫術には次の意味があります。
- 原始宗教の一つ
- 巫女が、精霊と交わった一種の没我の境地のなかで、悪霊・病魔の退散、吉凶の判断、予言などを行なうもの
シャーマニズムの特徴は、以下の3つの要素と言われています。
- トランスという特別の精神状態において脱魂または憑依(憑霊)が行われる
- 神仏・精霊などの超自然的存在と直接接触・交流・交信
- 社会的に一定の役割を持つ信仰と行動の体系
この中の、「脱魂」と「憑依」について説明していくと
≪脱魂≫
- ある人物の霊魂が身体を離脱すること
- 脱魂したシャーマンは、その間、超自然的存在と交流していて、その事情を報告する場合もある
≪憑依≫
- 神霊・精霊がある人物の身体に憑くこと
- 憑依されたシャーマンは、その間のことを正気に返った時にまるで覚えていない場合が少なくない
という状態です。シャーマニズムにおいては、シャーマンと呼ばれる宗教行為者が、大きな役割を果たしています。
「シャーマンとはトランス状態に入って超自然的存在(霊、神霊、精霊、死霊など)と交信する現象を起こすとされる職能・人物のことである。 『シャーマン』という用語・概念は、ツングース語で呪術師の一種を指す『šaman, シャマン』に由来し、19世紀以降に民俗学者や旅行家、探検家たちによって、極北や北アジアの呪術あるいは宗教的職能者一般を呼ぶために用いられるようになり、その後に宗教学、民俗学、人類学などの学問領域でも類似現象を指すための用語(学術用語)として用いられるようになったものである。」
なんとなく、イメージが沸いたでしょうか。日本でいうと、青森のイタコなどがシャーマンにあたります。
「死んだ家族がどんなことを思っているのか、知りたい」など、残された遺族がイタコに頼み、イタコが憑依した死者に代わって想いを述べる、というようなテレビ番組を見たことはないでしょうか。
霊的な存在を顕在化させるために、、シャーマンがあるといえそうです。
以上、ここまでアニミズムとシャーマニズムについてそれぞれまとめました。それではどこが違っており、どこか共通しているか。改めて整理していきましょう。
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アニミズムとシャーマニズムの違い
アニミズムと、シャーマニズムの違いは
- シャーマンという宗教的能力者を介すること
です。
例えば、日本におけるアニミズムがどういったものかというと、
- 様々なものに神様が宿っていると考える八百万の神々
- 家を建てる前に、土地神様を鎮めるという地鎮祭
などです。私たちがこういったものを信じる時に、「神様は目に見えないから、能力者(これがシャーマン)を通じて、見えるようにしよう」ということは普通考えません。
アニミズムは
- あらゆるものに精霊や神などが宿るとする世界観そのもの
シャーマニズムは
- シャーマンに依った宗教や現象の総称
と言えます。シャーマンが行う、祈祷、脱魂・憑依等の宗教行為まで全てを言います。アニミズムに含まれますが、その中の信仰の1つの形と言えるでしょう。
また、シャーマニズムは
- 霊の世界は物質界よりも上位にあり、物質界に影響を与えている
と考えていますが、アニミズムは、霊的存在と、物質界のどちらが上で、どちらが下か、という考え方はしません。「どちらの世界も存在する」という考え方です。
アミニズムは宗教観そのもの、シャーマニズムはその中の宗教の形態のひとつなのです。
それでは、共通点についても確認していきましょう。
アニミズムとシャーマニズムの共通点
それでは、アニミズムと、シャーマニズムに共通している点はどこかというと
- 霊的な存在を認めている点
です。目に見える物質だけでなく、目に見えない世界の存在も認めています。
繰り返しになりますが、アニミズムとは
- あらゆるものに精霊や神などが宿るとする世界観
であり、シャーマニズムは、霊的なもの・冥界の存在を信じるという点で、根底にはこのアニミズムの概念が流れています。
時には共存もあり得る
アニミズムは、宗教の源泉となる考え方そのものであり、
- シャーマニズムは、アニミズムに分類可能(包括されてる)
と言えます。
シャーマニズムとは
- アミニズムの一形態
のことなのです。
そのため、アニミズムとシャーマニズムが共存することはもちろんあり得ます。
日本には、様々なものに神や精霊が宿るとする八百万の神々の思想がある一方で、イタコなどのシャーマニズムも混在しています。
【まとめ】アニミズムとシャーマニズム
最後に、アミニズムとシャーマニズムについて、これまでの内容をまとめていきます。
- アニミズムは、宗教観そのもの
- シャーマニズムは、アニミズムの中の一形態であり信仰の形、又は宗教行為そのもの
であると言えます。
- 霊的なものを信じるという点では一緒
ですが
- シャーマニズムは霊的存在が、物質界よりも上位にある
- シャーマンという宗教行為者の存在が必要
という点では、アニミズムの考え方と少し異なっています。
日本の状況もそうですが
- アニミズムの考え方も、シャーマニズムの考え方も共存する
という状態は存在します。
ありとあらゆるものに神が宿るとするアニミズムの考え方に、日本人の私たちはそんなに違和感がないと思います。
一方、シャーマニズムは、聞いたこともあり、なんとなく想像もできますが、実際に目にしたことや、体感することは少ないのではないかと思います。それは一定の脱魂や憑依などの宗教行為を伴うものだからと言えるでしょう。私も、テレビで見るぐらいでしかイタコなどの存在は知りませんでした。
アニミズムとシャーマニズム、なんだかごちゃごちゃに認識していた言葉が、しっかりと別々のものとして、イメージを持っていただけたのではないでしょうか。
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