大和舞とは?倭舞・神主舞とも言われる男舞について徹底解説!
神社の祭礼では様々な神事を見ることができます。
特に印象深いのは雅楽に合わせて、神職・巫女の舞う「神楽舞」ではないでしょうか?この舞にはたくさんの種類があり、様々な意味が込められています。
ここではそんな神楽舞の中から「大和舞(やまとまい)」についてご紹介いたします。
大和舞という舞の意味を知って、より深く鑑賞を楽しみましょう。
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大和舞について
由来は?
大和舞は、雅楽のひとつで日本固有の歌舞(国風歌舞)です。「倭舞」や「和舞」とも表記され、大和地方(現在の奈良県)に宮廷の儀礼として取り入れられました。平安時代には宮中の大嘗祭や鎮魂祭、各地の神社の祭礼でも舞われています。
応仁の乱(1467年〜1477年)の際に、伝承が途絶えてしまったことがありますが、280年後の1748年の「大嘗会(天皇が即位後に初めて行う収穫を神に感謝する祭り)」で再興されました。
現在舞われているのは、改訂された舞になりますが、各神社で例祭の際に奉納されています。11月の鎮魂祭でも継承され、演じられていますが、こちらは非公開となっており、一般では見ることができません。
舞人の性別は?
大和舞は「男舞」、「神主舞」とも言われ、男性の舞となっています。基本的には男性神職、特に神社の宮司が舞いますが、一部の神社では巫女が舞ったり、子供(稚児)が舞うこともあるようです。
男舞とは「舞の型」が男性を模した舞のことを言います。
装束は?
通常4人で舞う大和舞ですが、舞人は2人づつ「袍(ほう)」の色が違い、赤と緑が使われます。
袍は朝服の上衣のひとつです。「うえのきぬ」とも呼ばれ、「束帯(そくたい)」の上衣です。文官用と武官用の2種類があります。
頭には冠に「垂纓(すいえい)」と呼ばれる後部に付けられた纓を下に垂らしたものをつけます。
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舞具は?
舞具とは舞う際に使われる道具のことですが、こちらの舞では「笏(しゃく)」が使われます。
「笏」は「束帯(そくたい)」を着用した際に右手に持つ細長い板のことです。中国では官人が備忘として書きつけをするために用いたとされています。後に、重要な儀式や神事に持つ人の威儀を表すために使われるようになりました。
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楽器は?
一般的には歌と伴奏を行う「歌方」は6人から8人で編成されます。
使われる楽器は、雅楽に使われる以下の3つです。
- 龍笛
竹で作られた横笛で、広い音域をもち、低い音から高い音まで響くその音色は「舞立ち昇る龍の鳴き声」と例えられています。
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- 篳篥
葦舌(した)と呼ばれるリードを使う管楽器です。音量が大きいことから、主に主旋律を担当します。
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- 和琴
日本最古の楽器と言われ、雅楽の楽器の中では最も格が高く、演奏者の中で最も位の高い人が演奏します。
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基本的には以上の3種類の楽器が使われますが、神社によって違いはあるようです。
また、歌を歌う歌方は「笏拍子(しゃくびょうし)」と呼ばれる拍子木(ひょうしぎ)を打ちながら歌います。
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大和舞はどこで見られる?
大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)福島県
1300年の歴史のある神社です。この地方は古代文明の栄えた地域で古墳や遺跡が発掘されています。
御祭神は大国様で有名な「大己貴命(おおなむちのみこと)」とえびす様の「事代主命(ことしろぬしのみこと)」です。
大國魂神社の大和舞は出雲流神楽の流れをくみ、いわき地方で最も古い歴史を持ちます。古事記、日本書紀の神話が題材となる、「三番叟(さんばんそう)」「三本剣」「猿田彦舞」「恵比寿舞」「大黒舞」「天之岩戸舞」の6演目の構成になっています。
現在は御祭神の大己貴命(大黒様)のお祭りになる「初音祭」「例大祭」、「樹魂祭」に大和舞が奉納されています。
白峰神社(しらみねじんじゃ)香川県
金刀比羅宮の境内社のひとつで崇徳天皇(すとくてんのう)を祀った神社です。
本宮から奥社に向かう途中の山上にあり、朱塗流造(しゅぬりながれつくり)、檜皮葺の美しい神社です。
崇徳天皇の命日である8月26日に「白峰神社例祭」が行われ、奇数年に「大和舞」、偶数年には「八乙女舞」が奉納されています。
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春日大社(かすがたいしゃ)奈良県
全国に1000社ある春日神社の総本社です。奈良時代に平城京の守護と国民の繁栄を祈願するために創建されました。中臣氏、藤原氏の氏神が御祭神として祀られています。主祭神の武甕槌命(たけみかづちのみこと)が白鹿に乗ってきたとされ、鹿が神使とされています。
こちらでは3月13日の春日祭申祭りと12月17日の春日若宮おん祭で見ることができます。
青摺衣(あおずりごろも)に榊を持って舞います。
二部構成になっており、
- 神主舞は1人または2人
- 諸司舞は4人または6人
で行われます。
【まとめ】大和舞について
では大和舞についてまとめていきます。
由来は?
- 日本固有の国風歌舞のひとつ。
- 大和地方(奈良県)に伝承された神楽舞
舞人の性別は?
- 男舞・神主舞とも言われ、男性神職が舞うのが一般的
装束は?
- 4人編成で束帯姿に赤と緑の袍と呼ばれる上衣を羽織る。
舞具は?
- 笏(しゃく)と呼ばれる官人が儀式、神事の際に持つ細長い板が使われる。
楽器は?
- 龍笛、篳篥という管楽器
- 和琴という弦楽器
神楽舞の中では奉納される神社も少なく、見る機会もなかなかないかもしれませんが、ここで紹介した神社の他にも例祭の際に奉納している神社もありますので、参拝、観光の際に機会がありましたらぜひ一度鑑賞してみてください。
女性の舞う神楽舞とは一味違う荘厳さや、絢爛さを感じることができると思います。
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