ムーダン(巫堂)を大特集!その役割や儀式、信仰の在り方とは
ムーダンって聞いたことありますか?韓国にいる巫女さんのことです。日本でいうところの、イタコさんのような感じでしょうか?
今日はこのムーダンについて、掘り下げていこうと思います。
- ムーダンとはどのような人のことか
- どのように儀式を行うか
など詳しくご紹介します。
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ムーダン(巫堂)について
まずは、ムーダンとは何かについておさえていきましょう。
ムーダン(巫堂)とは?
ムーダンとは、朝鮮半島における憑依巫女のことです。男性の巫はバスクと呼ばれるので、ムーダンとは単に女性の巫女のことを指しています。守護霊の力を借りて、占いや祈祷で人々を助ける役目を担います。
ムーダン(巫堂)の役割
ムーダンは、憑依降神の儀式を行いますが、役割は、大きく以下の4つに分かれます。
- 占い師
- 呪医
- 祭祀者
- 楽人芸能者
ムーダンは占い師や祭祀者であると同時に、呪医で民間治療を行い、また、楽人芸能者として歌舞音曲を扱います。
下の動画がムーダンの様子ですが、とても美しいですね。
ムーダンと仏教、道教
ムーダンは基本的には、土着の神を信仰しています。しかし、日本でも神仏習合(しんぶつしゅうごう)が起こったように、元々の土着の神と、あとから入ってきた道教や仏教が融合した形になりました。
長い歴史の中で、仏教・道教との交流が進み、それらの神を同時に信仰しているムーダンも多くいます。
今も根強い巫堂文化
巫堂の家は、通りを歩けば見つけられます。お寺のマークの「卍」のマークと赤と白の旗がムーダンの家の印です。
ムーダン(巫堂)の種類のその課程
ムーダンには
- 家系から生まれる世襲巫(せしゅうふ)
- 血筋に関係なく降神してなる降神巫(こうしんふ)
があります。いわゆる「世襲」と、「能力」タイプに分けられるようです。
以上が基本情報です。ここまでで、ムーダンは
- 朝鮮半島の憑依巫女
- 占い師、呪医、祭祀者、楽人芸能者と4つの役割
- 土着の神を信仰するが、仏教、道教を同時に信仰することもある
- 世襲巫と降神巫の2つのタイプがいる
ことが分かりました。
続いて、儀式の様子について見ていきます。
ムーダン(巫堂)の儀式
ここからは、ムーダンの儀式について、みていきたいと思います。
儀式の形式・流れ
ムーダンは、堂主神(モムジュ)となる神霊をその身に宿す儀式として「祈祷(クッ)」と呼ばれる降神の儀式を行います。祈祷(クッ)では太鼓を中心とした楽器を奏で、自ら踊りながら憑依降神の儀式を行います。舞の中には、笑いを誘う寸劇的な要素もあり、一種の伝統芸能者として受け入れられている側面もあります。
以下の動画は、儀式の様子です。
もう一つの動画です。芸能者という側面は、こういった形で現代にも受け入れられています。
儀式にかける時間
儀式はかなり長くかかる時もあります。1日中かかったり、時には何日もかかる場合もあります。
儀式を受ける側もですが、ムーダンの方も体力がいりますね。
儀式が行われる場所
ムーダンは家の一室に、神堂(クッパン)と呼ばれる神霊を祭る場所を作ります。そこで堂主神(モムジュ)への礼拝や儀式を行います。
神堂へは外部者はもちろん、家族さえも入ることが許されません。とても神聖な場所ですね。
家族の犠牲「人橋」
ムーダンの中には、人橋(インタリ)と呼ばれるものがあります。どのようなものかというと、
- 降神巫がムーダンになる過程で、家族の犠牲が要求されることもある
- ムーダンになることを反対する家庭で、家族の誰かが突然死ぬ
- 「家族の死」がムーダンへの掛け橋となる考え方
のことです。ちょっとだけ、怖い考え方ですね。
ムーダンの儀式について、ここまでをまとめます。
- 「祈祷(クッ)」と呼ばれる降神の儀式を行う
- 何日もかかって儀式が行われることもある
- 「神堂(クッパン)」という神聖な場所儀式を行う
- 「人橋(インタリ)」というムーダンになる過程がある
だいぶムーダンについて理解が深まってきましたね。
続いて、ムーダンの信仰についてもう少し見ていきます。
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ムーダン(巫堂)の信仰
ムーダン(巫堂)と神
ムーダンは土着の神を信仰しています。
ムーダンの神堂の中には様々な神の像が置かれており、その中でポピュラーなのが山の神です。
ただ最初にも少し述べましたが、長い歴の中で、仏教・道教との交流が進み、それらの神を同時に信仰しているムーダンも多くいます。
ムーダン(巫堂)の格<昔と今>
堂主神(モムジュ)によってムーダンの格が厳格に決めれらていた時期もありました。
上から
- 上席(サンソク)
- 中席(チュンソク)
- 上檀主
- 裏庭(ティッチョンムダン)
- 霊大神(ノク)
- 大主房
- 明図(ミョンド)
です。上位のムーダンと一緒に祈祷(クッ)を行う場合、下位のムーダンは祈祷(クッ)と雑用を全てこなすということもあったようです。部活の上下関係と同じような仕組みなんですね。
今は格の種類を残すのみになりましたし、経験を積むことによってより上位の堂主神(モムジュ)を降ろすこともできるようになるため、一生同じ格ということはありません。
ムーダン(巫堂)とユタに共通するエピソード
ムーダンは、土着の神を信仰していますが、先ほど述べたように、仏教・道教などを同時に信仰する人も多くいます。
その信仰の柔軟性は、沖縄のシャーマンであるユタとも似ている部分があります。
キリスト教の宣教師がきた折に、あるムーダンは「私の祈祷の時に、キリストにもおいでいただき、病人の苦しみをさらに減らしていただきましょう」と、言ったといいます。
一神教のキリスト教の考え方とは違い、ムーダンにとってはキリストも降神する神の一人であるということを象徴するエピソードです。
【まとめ】ムーダン(巫堂)について
これまでみてきた内容を、もう一度まとめます。
ムーダンとは
- 朝鮮半島の憑依巫女
- 占い師、呪医、祭祀者、楽人芸能者と4つの役割がある
- 土着の神を信仰するが、仏教、道教を同時に信仰することもある
- 世襲巫と降神巫の2つのタイプがいる
- 「格」が7種類ある
儀式の内容は
- 「祈祷(クッ)」と呼ばれる降神の儀式を行う
- 何日もかかって儀式が行われることもある
- 「神堂(クッパン)」という神聖な場所儀式を行う
- 「人橋(インタリ)」というムーダンになる過程がある
という感じです。
シャーマンといっても、衣装も美しく音楽芸能者の側面もあり、非常に関心が持ちやすいと思います。
機会があれば直接、儀式を見てみたいものですね。
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