祈りの本当の意味とは?「いのり」に秘められた語源、願いとの違い
人は古代より、己の願いを成就するために神の存在を信じ、その力に願いを宣べて実現しようとします。皆さんも願い事の実現を願い、神社や教会へ足を運んだ事があると思います。
ある時は祈祷し、ある時は呪文(経)を唱え、歌を歌い、舞を舞い、神に祈ります。
人はなぜ祈るのか、その祈りの意味とはいったいどんなことなのでしょうか。
ここでは「祈り」の意味と、神(宗教)の違いによる祈りの様式の違いについてご紹介します。
あなたの願いとその祈りはどのように結びついていくのか、その意味が分かるかもしれません。
「舞は祈りそのもの」舞の道 観音舞
祈りの意味とは
祈りとは「神格化されたものに対して実現を願う事」と定義されています。宗教や信仰において最も基本的な行為のひとつと言えます。
- 祈祷
- 語りかけ
- 黙祷
- 合掌
- 舞を舞う
- 供物を捧げる
など、その様式は様々で、またその対象も
- 神
- 祖霊信仰
- 太陽、星などの自然信仰
などがあり、時代や地域、個人の思想により多岐に渡りますが、その活動は人類社会において普遍的で生活の中心と言っても良いかもしれません。
祈りの本来の意味
前項で祈りとは「願うこと」と説明しましたが、宗教上においての本来の意味は「宣言すること」または「感謝すること」と言われています。
日本語の「いのり」の語源は「生きる(い)ことを宣べる(のり)」
つまり、自分の行動を宣言することなのです。
自分のことを願うのは「依存する」ことで、宣言することは「加護を求めること」。自分の生命を感謝し、見守ってもらう事が祈りの本来の意味とされています。
例えば、学業成就では「合格させてください」と祈るのではなく「合格できるように勉強しますので見守ってください」と祈ります。商売繁盛、恋愛成就なども同じで、あくまでも行動するのは自分なのです。
自分の中にいる「神」との対話
神の存在は目で見ることはできません。人々は自分の心の中に神を描き、そして祈ります。
「神との対話」という本があります。著者はニール・ドナルド・ウォルシュで日本でも300万部売れており、世界73か国で翻訳されています。彼の自らの体験を書き綴った本なのですが、非常に興味深い内容になっています。
彼は借金を背負い、奥さんに出ていかれ、人生のどん底に落ちた時、神に叫びました。
「神よ、なぜ私の人生はこんなにも辛いのだ!私は何のために生まれてきたのか!」
すると自分の中から神の声が聞こえてきたそうです。
「君は本当になぜ生まれてきたのか知りたいのか?では教えてあげよう」
そして彼は自分の中にいる神との会話を記録し、本としてまとめていきます。その内容は生きることはどういうことか、自分と神のつながり、神への祈りについて書かれています。大変長編になっていますが、興味がある方はぜひ読んでみてください。
祈りとは自分の中にいる神、または自分自身へ問いかけていくことなのかもしれません。
「舞は祈りそのもの」舞の道 観音舞
以上から、願いとは違い、祈りには
- 生きること、行動することを宣言すること
- 感謝すること
- 自分自身との対話
などの意味があることがわかりました。
では、祈りの対象となる神とその様式にはどのような違いがあるのでしょうか。次章では宗教ごとに祈りの様式の違いについてまとめていきます。
宗教による祈りの意味の違い
日本では日本国憲法第20条により信仰の自由が認められていますが、そのほとんどを神道と仏教が占めています。
そしてその信仰対象、宗教によって祈りの様式、考え方は様々です。ここでは日本でも普及している宗教ごとにその様式の違いをまとめていきます。
- キリスト教
- 仏教
- 神道
- イスラム教
- カトリック教会
以上の5つの宗教についてご紹介いたします。
キリスト教
キリスト教では祈りは信仰生活の中心です。賛美、感謝、嘆願、執成、静聴、悔改と多様で、この全てが祈りとなります。
神の言葉を聞いてそれに基づいて祈る事が重要で、自分の願いを祈るのではなく、自身の信仰への決意表明を指します。その形式は「キリストの御名によって」祈る事です。
宗派によってその形態は様々ですが、キリスト教での祈りは神への賛美を本来的な形としていて、永遠なる神との人格的な交わりが最大の意義とされています。
祈りによっては聖歌や賛美歌など歌唱を伴うものもあります。
仏教
仏教では読経、念仏、題目、合掌、参拝が祈りにあたります。
宗派によってその内容、教えは様々ですが、人が「死ぬこと」を怖がり、苦しみ、その苦しみを和らげるために仏様に救いを求め祈るのです。また、仏の力で病気、災難から助けを求める「願掛け」や「祈祷念仏」という祈りもあります。
神道
神道とは日本で生まれ、古来より伝わってきた信仰です。八百万の神への信仰が仏教、儒教の影響を受け形になった日本の民族宗教です。自然崇拝や祖先崇拝などその祈りの内容は多岐に渡ります。
自然崇拝はあらゆるものに神が宿るとされ、木や岩、滝や森なども祈りの対象になります。
また神だけでなく、命や魂、また精霊などへの祈りも行われその祈りの全てを「神事」として祭礼が執り行われます。
神道においての祈りとは巫(かんなぎ)であり、その起源は占いや憑依による神からのお告げになります。現在では神社においての祭礼での舞や拝礼、また各地で行われるお祭りなどで五穀豊穣、商売繁盛、家内安全、天下泰平などの祈願祈念の神事が執り行われています。
イスラム教
イスラム教は世界三大宗教にひとつです。一神教で唯一のアッラー(神)への信仰で、名門商家ハーシム家のムハンマドが開祖となります。最大宗派のスンナ派とシーア派に分かれており、シーア派は主にイラク・イランで信仰されています。
イスラム教の祈りは唯一の神アッラーへの礼拝で1日に5回の礼拝が決められています。
祈りの意味は、アッラーの偉大さを前に頭を下げ、仕える事。礼拝によりアッラーの御前に行き、しもべとして呼びかけることができます。そこに心の喜びと平和を見出しているのです。
カトリック教会
カトリック教会はキリスト教の最大宗派です。ローマ教皇を中心に全世界に12億人以上の信者がいます。カトリックは教会が最大の権限を持つ階級組織で、対照となる個々の自由な信仰に任せる宗派がプロテスタントとなっています。
カトリックには「告解(こっかい)」という自分の犯した罪の赦しをこう儀礼があります。
日々の生活の中の罪を懺悔、反省する事がカトリックにおける祈りとなり、「悔い改めれば全ての罪は許される」「隣人を赦し、愛すこと」という教えにつながっています。
【まとめ】祈りの意味とは?
祈りの意味とは
- 神格化されたものに対して実現を願う事
- 方法は様々で祈祷、語りかけ、黙祷、合掌、舞、供物などがある。
祈りの本来の意味
- 日本語の語源は「生(い)きることを宣べる(のり)」で、自分の行動を宣言すること。
- 自分の生命を感謝し、見守ってもらうこと。
人は心の拠り所として神の存在をその心の中につくり、自分の生命や願望を神に託し、祈りという手段で伝えてきました。それは宗教によって違いはありますが、古来よりの人間の本質なのかもしれません。
皆さんの祈りは誰に向けて、そして思い描く未来はどのようなものですか?自分の中の神の声に耳を傾けてみるのも良いのではないでしょうか。
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