朝日舞についてご紹介!始まりはいつ?現代ではどこで見られる?
神社の祭礼の際に神楽と呼ばれる舞が披露されているのをみた事があると思います。祈りを込めて神に舞を奏上する儀式ですが、今では芸術的な部分も多くあります。
そのほとんどは巫女(女性)による「巫女舞」ですが、男性が舞う「舞」もある事をご存知でしょうか?
それが「朝日舞」です。
ここでは「朝日舞」について始まりから歌詞、装束、どこで見れるのかをご紹介します。
巫女舞とは違った神楽の楽しみ方を知る事で、神社に訪れた際、その歴史に少し近づく事ができますよ。
最も古く、最も新しい舞はこちら
朝日舞とは
「朝日舞」は現代神楽のひとつです。
現代神楽とは、1300年以上続く神楽の歴史で、明治時代以降に新しく作舞された神楽舞です。その多くは女性が舞う「巫女舞」で、「浦安の舞」や「豊栄の舞」などが有名です。
しかし、巫女(女性)のいない神社もあり、宮司(男性)の舞が作られました。宮司以外の神職が舞うこともありますが、主として宮司が舞うことを想定して作られたため「宮司舞(ぐうじまい)」とも呼ばれています。
宮司とは神職の長のことで、神社での責任者を指します。
神社に従事する人を「神主」と言うこともありますが、
- 「神主」は職業の名前で、神職のこと
- 「宮司」は役職名
ということです。
神職の階級は、宮司が神社のトップで祭祀を司る責任者。
次いで
- 権宮司(ごんぐうじ)
- 禰宜(ねぎ)
- 権禰宜(ごんねぎ)
といった職階になっています。
朝日舞の始まり
1950年(昭和25年)に神社本庁が小野雅楽会に作曲を委嘱して、祭祀舞として制定されました。
小野雅楽会とは民間の雅楽演奏団体では最も古く、明治20年に発足。民間への雅楽の普及を目的に、当時の小野照崎神社の宮司「小野亮道」が創設しました。
現在でも活動しており、毎月宮内庁の楽師OBを指導者に招いての練習会が行われ、主催の発表会や海外公演も行っています。また台東区無形文化財(2000年)にも指定されています。
朝日舞の作曲は?
当時の宮内省の楽師「東儀和太郎(とうぎまさたろう)」が作曲しました。
東儀和太郎は、
- 天王寺方楽家安倍季兼の子孫で
- 東儀家の14代目
- 昭和45年には宮内庁式部職学部楽長を務め
- 退官後は小野雅楽会の楽長にも就任
平成5年に亡くなるまで雅楽の普及に尽力された人物です。
朝日舞の歌詞は?
明治天皇の御製2首が使われています。
さしのぼる朝日の如く爽やかに もたまほしきは心なりけり
目に見えぬ神の心に通ふこそ 人の心のまことなりけれ
爽やかな空にあらわれる朝日と神の心の大きさを比喩しているのでしょうか。
朝日舞の装束は?
正式な装束は「衣冠(いかん)」が使用されますが、略式として「狩衣(かりぎぬ)」も使われる事が多いようです。
・衣冠
衣冠は官人が宮中に出仕する際に着用する装束の「束帯(そくたい)」の一種で見た目はほとんど変わりません。もともと宿直の時に着られており、石帯(せきたい)と呼ばれる革の帯を絞めない略式の束帯となります。
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・狩衣
もともと狩りの際に着られた動きやすい装束です。脇の間から下の単が見えるのが特徴です。それぞれの裾に紐が入っていて、絞って着ることもできます。
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朝日舞の舞具は?
- 白輪
- 紙垂れを付けた大きめの榊(さかき)
が使用されます。白輪は鏡を表してます。
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朝日舞に使用する楽器は?
・龍笛(りゅうてき)
竹で作られた横笛です。広い音域を持ち、低い音から高い音まで響くその音色が「舞立ち昇る龍の鳴き声」と例えられたのが名前の由来となります。
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・篳篥(ひちりき)
葦舌(した)と言われるリードを使う管楽器で音量が大きく、主に主旋律を担当します。笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)とまとめて三管と呼ばれます。
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・和琴(わごん)
日本最古の楽器と言われており、雅楽の楽器の中でも格が高く、位の高い人が演奏します。
大和琴(やまとごと)や東琴(あずまごと)と呼ばれることもあります。
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・笏拍子(しゃくびょうし)
打楽器のひとつで、もともとは笏を縦に割って使っていました。両手に持ち、拍子木のように打ち合わせて音を出します。
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朝日舞はどこで見られる?
・雅音楽祭(みやびおんがくさい)
毎年、富山県で伊勢神宮式年遷宮奉賛会・富山県本部の主催にて、富山県神社庁雅楽部による「雅音楽祭」というイベントが行われています。
雅楽部は県内の神職たちで構成されており、若い世代の方たちに日本の伝統文化を伝えるために活動しています。
・群馬県神社庁 沼田利根支部「神宮大麻頒布式」
群馬県で行われた神宮大麻頒布式です。神宮大麻とは神宮のお神札のことで各地に配られたお神札を祀る式典です。
その他、各神社での祭礼の際に見ることができます。
・経堂天祖神社(東京都 世田谷)
女性が舞うこともあります。
・西野神社春季例祭(北海道 札幌市)
・熊野皇大神社(長野県 軽井沢)
それぞれ、色鮮やかな装束が印象的です。
装束は各神社で特色があり、見比べてみるもの興味深いものですね。
【まとめ】朝日舞について
朝日舞とは
- 明治時代以降に作舞された神楽舞。男性宮司が舞うことを想定して作られた為、「宮司舞」とも呼ばれている。
始まりは?
- 1950年(昭和25年)に小野雅楽会によって作舞、祭祀舞として制定されている。
作曲は?
- 当時の宮内省の楽師、後の小野雅楽会会長「東儀和太郎(とうぎまさたろう)」が作曲。
装束は?
- 正式な装束は「衣冠(いかん)」が使用される。略式として「狩衣(かりぎぬ)」も使われる事が多い。
舞具は?
- 白輪、紙垂れを付けた大きめの榊(さかき)が使用される。白輪は鏡を表している。
使用する楽器は?
- 龍笛、篳篥、和琴、笏拍子が使われる。
朝日舞はどこで見られる?
- 富山県の伊勢神宮式年遷宮奉賛会主催の「雅音楽会」や各地で行われる神宮大麻頒布式の式典など。
- その他各神社の祭礼の際に見る事ができる。
男性宮司による神楽舞「朝日舞」。女性の「巫女舞」と比べて力強さを感じる事ができると思います。
現在では神社の数が80,000社以上ありますが、宮司の人数は10,000人となっており、朝日舞の舞われる神社も少なくなっているようです。
神社の代表である宮司の舞う「朝日舞」をぜひ見に行ってみてはいかがでしょうか。
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