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舞楽とは?日本最古の音楽をわかりやすく解説!演目例は4つ

舞楽 演目 衣装 太平楽

日本の最古の音楽として伝えられている「舞楽(ぶがく)」。しかし、詳しく知っている人も少ないと思います。

現在では神社での神々への奉納や神事の際に見ることができますが、中々目にすることができません。そして、一言で「舞楽」と言ってもその中身は様々な種類に分類されているのです。

ここではそんな「舞楽」について、実際の演目も合わせてご紹介していきます。

これを読むことによって実際の「舞楽」に触れたとき、その意味を理解することができるでしょう。

ぜひ日本の音楽の始まりの歴史に触れてみてください。

 

神楽舞の奉納はこちら

舞楽について

成り立ち

舞楽は

  • 朝鮮半島から伝わった「高麗楽(こまがく)」
  • 中国大陸から伝わった「唐楽(からがく)」

を源流とし、これに当時から日本にあった

  • 「倭唄(しずうた)」
  • 「久米歌(くめうた)」
  • 「神楽歌(かぐらうた)」

などの歌と舞を合わせて10世紀頃の平安時代に形となった舞のひとつです。

この舞楽は由来となるものによって「左方」と「右方」に分けられています。

左方と右方

舞楽と言っても大きく「左方」「右方」に分けられ、その舞はそれぞれに対照性を見ることができます。

前述した

  • 中国系の楽舞を源流とするものを「左方」の舞・「左舞」
  • 朝鮮半島系の楽舞を源流とするものを「右方」の舞・「右舞」

と呼びます。

これは奏される音楽が元となる「唐楽」「高麗楽」で違いがあり、楽器の編成や音楽の響き方に違いがあるためです。基本はどちらも管楽器と打楽器による音楽となっています。

衣装は左舞が赤系統の装束を基調としているのに対して右舞は緑系統の装束となっています。また舞人の登場も、舞台の左後方から登場する左舞に対して、右舞は右後方からの登場となっており、この点でも舞の対照性を見ることができます。

これは当時の日本が渡来してきた文化に対して、雑多に併存していたものを大きく二分化する風潮が強かったためです。

宮中の武官である近衛府の官人たちは左右に分かれて様々な武技を争い、また左を陽、右を隠とする陰陽思想とも結びついていたためと言われており、多くの対称性を持つ日本独自の舞楽へと整えられていきました。

「左方」

  • 中国系の舞に由来し、平安時代に整えられた舞が左舞です。音楽は唐楽が用いられ、衣装は赤系統の装束を使用し、左側からの登場や、左足を軸とした動きなど、「左」をキーワードとした演出がなされています。舞は前後の舞を互いに溶け込ませるような流れる動きが特徴的です。おおらかで優雅な振り付けとなっています。

「右方」

  • 朝鮮半島系の舞が由来となり、高麗楽という音楽が用いられます。緑系統の装束が使われ、左方と対照的に右側からの登場、右足を軸とした動きなどの演出となっています。舞は型の切れ目がはっきりしており、一連の動きが短いリズミカルなものになっています。

使用される楽器は?

「左方」では唐楽で使用される3つの管楽器と3つの打楽器が使用されます。

  • 「笙(しょう)」
  • 「龍笛(りゅうてき)」
  • 「篳篥(ひちりき)」

の管楽器と、

  • 「鞨鼓(かっこ)」
  • 「太鼓(たいこ)」
  • 「鉦鼓(しょうこ)」

の打楽器です。

特に管楽器の「笙」の存在が左舞の大きな特徴となり、「笙」が切れ目なく奏でる和音が華やかでふんわりとした音楽を生み出しています。また「鞨鼓」で多用される細かい連打奏法も唐楽の響きをいっそう柔らかいものにしています。

「右方」では高麗楽で使用される楽器が使われ、「左方」の「笙」の代わりに「高麗笛」「三ノ鼓」と言われる打楽器が使われています。唐楽と違い、「笙」が使われないため、高麗笛と篳篥が奏でる旋律の輪郭が際立って聴こえます。また、三ノ鼓は「鞨鼓」と違い長短のある一定の間を持つ打ち方で簡素なリズムとなっています。曲調としては左舞に比べて簡素で旋律は一定の部分、もしくは曲全体が繰り返して演奏できるように整えられています。

舞楽を広めた人とは?

平安時代に形となった舞楽ですが、その後の応仁の乱の後、戦乱が続きその文化は衰退していきます。

しかし、江戸時代に入り、寛永19年(1642年)、三代目将軍徳川家光が江戸城内に「紅葉山楽人(もみじやまがくにん)」を設け、紅葉山に建つ徳川家康の廟所で行う祭儀のために、京都・大阪・奈良から8人の楽人を召喚します。これにより、愛好する大名や宮中でも行われるようになり、広まって行ったのです。

明治時代に入ると紅葉山楽人が東京へ召集され、雅楽局、後の宮内省雅楽部へと変換されていったのです。

曲数は?

左舞と右舞で構成される舞楽の演目では一定の型があり、左右が共に奏する曲が始めと終わりにあり、その間に左右それぞれの演目が交互に上演されます。

振鉾三節

  • 最初に左方・右方から1人ずつ登場し、舞台を清めるために鉾を振る「振鉾(えんぶ)」が舞われます。一節を左、二節を右、三節は両方で行われるので「振鉾三節」と呼ばれます。

番舞

  • 次に左方と右方が交互に演目を何番か演じます。この似た演目同士を組み合わせる構成を「番舞(つがいまい)」と呼びます。

長慶子

  • 最後に退出のための軽快な楽曲「長慶子(ちょうげいし)」を演奏して終わります。

答舞

番舞の際に似た演目を交互に舞うことになりますが、この対となる舞を前の舞に対応する舞いとして「答舞(とうぶ)」と呼びます。これは演目としてすでに決まっていますが、ある演目についての番舞が複数存在しているものもあります。

代表的なものをご紹介しておきます

  • 左舞「万歳楽(まんざいらく)」の答舞は右舞「延喜楽(えんぎらく)」
  • 左舞「賀殿(かてん)」の答舞は右舞「長保楽(ちょうぼうらく)」
  • 左舞「太平楽(たいへいらく)」の答舞は右舞「狛鉾(こまほこ)」
  • 左舞「春庭楽(しゅんていらく)」の答舞は右舞「白浜(ほうひん)」
  • 左舞「蘭陵王(らんりょうおう)」の答舞は右舞「納曽利(なそり)」
  • 左舞「散手(さんじゅ)」の答舞は右舞「貴徳(きとく)」
  • 左舞「迦陵頻(かりょうびん)」の答舞は右舞「胡蝶(こちょう)」

 

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舞楽の演目例

舞楽の演目は

  • 平舞(ひらまい)
  • 武舞(ぶのまい)
  • 走舞(はしりまい)
  • 童舞(わらわまい)

の4種類に分類されます。

平舞

  • 「文舞(ぶんのまい)」とも言われ、抽象的な動きでの緩やかなテンポの舞です。4人〜6人で行い、互いに対照的な動きで方向を変えながら舞の型を進めます。左舞では面を使いませんが、右舞では面をつけるものもあります。

武舞

  • 太刀を身につけ、楯、鉾などの武具をもち、1人〜4人で舞います。陣形を変えながら戦う合戦をイメージした舞となり、迫力のある勇壮な舞です。演目ごとに「別装束」と呼ばれる固有の衣装が用意されます。

走舞

  • 走物(はしりもの)とも呼ばれ舞台上を活発に動き回る1人〜2人の舞です。音楽は平舞よりもテンポが速く、旋律に特徴がある曲が多くあります。袖や裾を絞った動きやすい衣装で面をつけて舞います。伝説に基づいた物語調の内容となっています。

童舞

  • 子供によって舞われます。大人の装束を子供用に小さく仕立てた衣装となり、面は使わず、顔を白塗りに化粧します。

ここから舞楽の代表的な演目をご紹介します。

青海波(せいかいは)

左舞の「振鉾」の舞で2人舞です。4人舞の「輪台(りんだい)」と続けて1組で奏されます。2人の舞人がゆったりと袖を振りながら舞う非常に優雅な舞となり、源氏物語紅葉賀の場面に取り上げられ、源氏の君が頭中将と2人で舞い、その光輝く美しさに皆が涙するシーンが有名です。

演奏の打ち物(打楽器)に「千鳥懸(ちどりがけ)」・「男波(おなみ)」・「女波(めなみ)」の特殊奏法があるのも特徴です。

番舞は「敷手」となっています。

太平楽(たいへいらく)

左舞の代表的な武舞です。4人舞で別装束の鎧や兜を着用します。この装束は甲冑装束とも言われ、大変重く、舞楽装束の中ではもっとも複雑な物になっています。装束の点数も多く、全て合わせると15キロに達します。この衣装で約40分間舞うため、大変な体力を要する舞となっています。両肩につく木製の肩喰(かたくい)は龍頭・獅子頭ともいい、緻密な彫刻、彩色が施されています。

また鎧の裾に鈴がつけられており、舞人の動きに合わせて鳴り響き、独特の雰囲気を醸し出しています。

番舞には

  • 「狛鉾」
  • 「古鳥蘇(ことりそ)」
  • 「陪臚(ばいろ)」

などがあります。

【まとめ】舞楽について

成り立ち

  • 舞楽は朝鮮半島から伝わった「高麗楽」、中国大陸から伝わった「唐楽」に日本の「倭唄」・「久留米歌」・「神楽歌」が結びつき型となった。
  • 平安時代に形となり現在まで継承されている。

左方と右方

  • 舞楽は「左方」・「左舞」と「右方」・「右舞」に分類される。
  • 「左方」は中国系の舞が由来。楽曲は「唐楽」が元になっている。左をキーワードとした舞となり、おおらかで優雅な舞が特徴。
  • 「右方」は朝鮮半島系の舞が由来。楽曲は「高麗楽」が元となり、右がキーワードの舞。型の切れ目がはっきりしていて、一連の動きが短いリズミカルな舞になっている。

使用する楽器

  • 大陸から伝わった日本の雅楽楽器が使われる。
  • 「左方」では「笙」・「龍笛」・「篳篥」の3つの管楽器、「鞨鼓」・「太鼓」・「鉦鼓」の3つの打楽器が使われる。
  • 「左方」では「笙」による切れ目なく奏でられる和音や「鞨鼓」による細かい連打奏法が特徴。
  • 「右方」では「高麗笛」・「篳篥」の2つの管楽器、「三ノ鼓」・「太鼓」・「鉦鼓」の3つの打楽器が使われる。
  • 「右方」では「高麗笛」・「篳篥」による輪郭の際立つ旋律、「三ノ鼓」による長短のある一定の間を持つ簡素なリズムが特徴。

舞の種類

  • 演目は「振鉾三節」・「番舞」・「長慶子」の三部に分かれている。
  • 「振鉾三節」は舞台を清めるために鉾を振るう「振鉾」を左方、右方、両方の三節行う。
  • 「番舞」は左右が交互に舞い、似た演目を組み合わせる舞。この対となる舞を「答舞」という。
  • 「長慶子」は退出のための軽快な楽曲。

演目の種類

  • 舞楽は4種類の演目に分けられる。
  • 「平舞」は「文舞」とも言われ緩やかなテンポの舞。複数人で互いに対照的な動きで方向を変えながら舞う。
  • 「武舞」は太刀や楯、鉾をもち、合戦での陣形を思わせる迫力ある勇壮な舞。
  • 「走舞」は舞台上を活発に動き回る舞。テンポが速く、旋律に特徴がある曲が使われる。
  • 「童舞」は子供による舞。面は使わず、顔を白塗りにして舞う。

様々に分類される舞楽ですが、その由来となる中国大陸や朝鮮半島の音楽が結びつき、日本でひとつの舞踊となって今も伝えられています。それぞれの舞の特徴を理解しながら観覧できればまた違った一面も発見できるかもしれません。

ぜひ実際の「舞楽」に触れてみてください。きっと日本の文化の始まりを感じることができますよ。