神楽とは?歴史を由来・起源からみる神楽の昔と今
神社での祭礼やお祭りなどで舞が奉納されているところを見たことがある人も多いと思います。舞といえば日本舞踊や歌舞伎などが有名ですが、ここで舞われているものは「神楽(かぐら)」と呼ばれる舞になります。
神楽の歴史は古く、日本という国の創生まで遡ることができます。ここではこの「神楽」について起源や種類についてご紹介します。
日本の舞踊の始まりと言っていい神楽の歴史を知ることで、日本という国と舞の関係性が見えてくると思いますよ。
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神楽とは?その歴史的起源と由来
神楽は日本の神道で神事の際に、神様に奉納する歌舞のことです。
神社の祭礼やお祭りの際に見ることができ、その様式は平安時代中期に完成されたとされ、約90種類の神楽歌が存在しています。
神楽の語源は「神座(かみくら・かむくら)」が転じて神楽(かぐら)となったと言われ、神座は「神の宿るところ」を意味していて、この神座に神様を降ろし、巫女が神がかりして人々と交信する場での歌舞が神楽と呼ばれるようになりました。
原点は、神話「岩戸隠れの段」
神楽の起源は、日本最古の書物である古事記・日本書紀の「岩戸隠れの段」という神話からきています。
この物語は、「素戔嗚尊(すさのおのみこと)」の暴虐武人の振る舞いに、心を痛めた「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」が天岩戸に閉じこもってしまい、世界から日の光が失われた際に、技芸の女神であった「天鈿女命(あめのうずめのみこと)」が岩戸の前で舞を披露し、その賑やかな様子に気を取られた天照大御神を岩戸から誘い出し、世界に日の光を取り戻した。という内容です。その後、天鈿女の子孫でもある巫女の「猿女君(さるめのきみ)」が神がかりの儀式を行う際に、舞を取り入れ、それから巫女による神楽が始まったのです。
「舞い方」と「はやし方」
神楽は舞を舞う「舞い方」と、楽器により曲をつけたり、歌を歌う「はやし方」に分かれています。
「舞い方」は神社では神職や巫女が一般的ですが、現在は地方によって地元の小学生や、また神楽を芸能として伝承している保存会が舞うところもあります。
「はやし方」は日本古来の雅楽楽器によって演奏されます。使われる楽器は「三管」・「三鼓」・「両弦」と呼ばれる8種類になります。
「三管」は、笙・篳篥・龍笛と呼ばれる管楽器です
- 笙は「天から差し込む光」
- 龍笛は「天と地の間を縦横無尽に駆け巡る龍」
- 篳篥は「地上にこだまする人々の声」
を表しており、合奏することにより「宇宙を創ることができる」と考えられていました。
「三鼓」は、鞨鼓・鉦鼓・太鼓の打楽器です。鞨鼓を担当する奏者が全体のテンポを決める指揮者の役目を果たします。
「両舷」は、琵琶・箏という弦楽器です。琵琶はリズムを支える役目を担っています。箏は「和琴(わごん)」とも呼ばれますが、中国から伝えられた琴とは別物で「柱(じ)」と呼ばれる支えによって音程を調節するものです。
神楽の舞の種類について
神楽は各地方によって様々に変化し伝承されています。そしてその系統により細かく分類されています。
神楽の舞は大きく分けて「御神楽(みかぐら)」と「里神楽(さとかぐら)」に分かれています。
御神楽は宮中での儀式として行われる神楽です。一般公開はされず、大嘗祭などで行われています。それに対して、里神楽は私たちが目にする、神社やお祭りなどで行われる神楽となります。
里神楽はその中でもさらに細かく次の4つに分類されます。
- 巫女神楽(みこかぐら)
巫女の舞う神楽です。神楽の起源と言える神がかりのための舞が様式化し、祈祷や奉納のための舞として行われるようになりました。
- 出雲流神楽(いずもりゅうかぐら)
採物神楽(とりものかぐら)とも呼ばれ、出雲国・佐陀神社から広まった神楽です。日本神話を劇化した舞となり、演劇性・娯楽性を高め、芸能としても見応えのあるものになっています。その題材ごとに様々な採り物を持って舞われます。
- 伊勢流神楽(いせりゅうかぐら)
伊勢外宮の摂末社の神楽役が行ったものが各地へ広まった神楽です。湯立神楽(ゆだてかぐら)とも呼ばれ、湯立てとは、釜で湯を沸かし、巫女や神職が自身や周囲にその湯をかけて清める儀式で、これが神楽と結びついたものになります。
- 獅子神楽(ししかぐら)
獅子舞の一種で、獅子頭(ししがしら)と呼ばれる獅子の頭部をご神体として、各地を周り、祈祷やお祓いを行います。東北地方では山伏神楽(やまぶしかぐら)、伊勢地方では太神楽(だいかぐら)と呼ばれます。
神楽の昔と今
神楽の永い歴史の中で様々な時代背景や、政治・権力などの影響を受けて変化を加え、伝承されてきた神楽ですが、昔と今ではどのような違いがあるのでしょうか。その舞の意味を踏まえて、どのようなシチュエーションで舞われているのか違いを見てみましょう。
昔はいつ神楽を舞っていたのか
先述しましたが、神楽の起源は神話のお話です。ここからシャーマニズムとしての巫女が誕生し、その儀式として舞が使われるようになりました。古代神道では、巫女による神の託宣を受けるための重要な儀式だったのです。
その後、巫女による憑依降神の文化が衰退してくると、神楽は様式化され、宮中や、神社で神への奉納という意味合いに変化していきます。
現在でも東北地方の「イタコ」や沖縄の「ユタ」など憑依能力による神がかりを行う巫女は存在していますが、当時の巫女のような神楽による憑依神託はなくなり、昔の神楽との関わりは無くなっていると言っていいでしょう。
これは明治時代に起こった文化改革により、「巫女禁断令」によるところが大きく、近代国家建国のために国家宗教としてシャーマニズムの考え方が規制されたことによるものでしょう。
今はどこでみられるのか
現在では、春日大社をはじめとした神社により、神楽の文化芸能としての重要性が広く認知され、神社での神事の際の奉納や、保存会などによる演劇としての神楽が継承されています。
各地方の神社では、春や秋の礼大祭や年初めの神事などで神楽を行う神社が多く、全国各地でその地方独特の神楽が見れるようになっています。これはその芸術性が認められ、町おこしなど、観光資源としての一面も持っています。
【まとめ】神楽とは?歴史と今
では、最後にまとめましょう。
神楽の原点
- 原点は古事記・日本書紀にある神話「岩戸隠れの段」。
- 技芸の女神「天鈿女命」による舞が始まり。
- 巫女による神がかりの儀式として舞が行われるようになった。
舞い方とはやし方
- 舞を舞う「舞い方」は神社の巫女や神職によって行われる。
- 地方によっては地元の小学生や保存会の会員によって舞われるところもある。
- 楽器の演奏は「はやし方」によって日本古来の雅楽楽器で行われる。
- 三管・三鼓・両弦と呼ばれる8種類の楽器が一般的。
神楽舞の種類
- 宮中の儀式として行われる「御神楽」と神社など各地方で行われる「里神楽」に分類される。
- 「里神楽」は地方により様々な文化と結びつき、「巫女神楽」・「出雲流神楽」・「伊勢流神楽」・「獅子神楽」として広がっていった。
神楽の今と昔
- 神楽の始まりはシャーマニズムによる神がかりの儀式。
- 神社による奉納・祈願としての神事として取り入れられる。
- 文化芸能としての芸術性が認知され、町おこしなど観光資源として地方のお祭りなどに取り入れられた。
現在は神社での神事の一つとして定着している神楽ですが、その歴史は永く、舞の意味合いも大きく変化して継承されたものなのです。
昔の人が何を思い、何を願い、神楽を伝え続け今に至るのか、そんな歴史を考えながら鑑賞するとまた違った角度から神楽を楽しめると思います。
皆さんもぜひ日本最古の舞踊文化である神楽の世界に浸って見てはいかがでしょうか。
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