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神楽の種類をすべて紹介!成り立ちから舞・衣装の違いまで

神楽 種類 衣装

神社で行われる神事に「神楽(かぐら)」というものがあります。歌舞という他の神事とは一味違う色を感じることができる神事です。

神社で巫女が舞う神楽を見たことがある人も少なくないと思いますが、神楽の種類はそれだけではありません。

この神楽はその地方や各神社によって内容は様々です。ここではこの神楽の種類についてご紹介いたします

知らない神楽の種類について知ることができれば、きっと新しい神楽への興味も湧いてくると思いますよ。

 

元巫女による古式巫女舞をベースにした舞はこちら

神楽の種類について

神楽は日本古来の宗教である「神道」の神事において、神に奉納されるために奏される歌舞になります。

神楽という語源は「神座(かむくら・かみくら)」からきており、神座は「神の宿るところ」を意味し、神座に神々を降ろし、人々の穢れを祓ったり、神がかりによって人々と交流する宴の場で、そこでの歌舞が神楽と呼ばれるようになりました

起源は日本最古の書物である「古事記」・「日本書紀」にある「岩戸隠れの段」の神話からきているとされています。

ここでは太陽神である「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」が天岩戸にお隠れになり世界から日の光が失われた際に、技芸の女神である「天鈿女命(あめのうずめのみこと)」が舞を舞い、天照大御神を岩戸から誘い出し、日の光を取り戻したとされています。

後に天鈿女命の子孫であり、最初の巫女とされる「猿女君(さるめのきみ)」が宮中での鎮魂の儀式に取り入れ、神事としても定着していったのです。

「御神楽」と「里神楽」

神楽は大きく分けて二つに分類されます。それは宮中で行われる「御神楽(みかぐら)」と民間の「里神楽(さとかぐら)」です。

私たちが神社等で見ることのできる神楽は里神楽で、こちらの神楽が一般的に「神楽」と呼ばれています。

御神楽について

宮中の賢所で行われる神楽で古くは「内待所御神楽」と言われていたものです。こちらは「雅楽」に含まれるもので長保4年(1002年)から隔年で行われるようになり、後に毎年の行事として定着しています。

明治41年(1908年)には「皇室祭祀令」で「小祭」の一つとして定められましたが、1947年には祭祀令は廃止となっています。

現在では毎年12月に宮内庁式部職楽部によって簡略化された御神楽として行われています。また大嘗祭でも同様に行われていますが、非公開となっています。

里神楽について

里神楽は一般的に神楽と言われるものです。神社などでの神事や、芸能として私たちが見ることのできる神楽はすべて里神楽となっています。

里神楽は巫女による神がかりの神楽から、神事として行事化されることにより、全国に広まり、その地方によって様々なものと結びつき、地方によって多種多様に広がっていきました。

里神楽の様式について芸能研究者の「本田安次」により、4種類に分類され区別されています。

それぞれの特徴を紹介していきます。

巫女神楽(神がかり系・八乙女系)

神楽の起源となる巫女による神楽です。本来は神がかりのための舞でしたが、様式化され、祈祷や奉納の舞として行われています。巫女神楽の中でも託宣を行うために無我の境地に入るための「神がかり系」とされるものと、祈祷や奉納の要素を強くし、舞の優美さに重きをおいた「八乙女系」と呼ばれるものがあり、現在神社での神事の際に行われるものは八乙女系に属するものがほとんどとなっています。

舞は現在では近代神楽とも言われる明治時代以降に創作された舞が一般的に使用され、「浦安の舞」や「豊栄の舞」などが有名です。巫女のイメージに合わせ、女性らしい優雅で華麗な舞になっています。

巫女の舞となりますので衣装は巫女装束となります。「白衣(はくえ)」と呼ばれる白い小袖に「緋袴(ひばかま)」、「千早(ちはや)」と呼ばれるはおりというスタイルが一般的です。面は付けずに頭飾りとして「天冠(てんかん)」や「花簪(はなかんざし)」、「折枝(せっし)」などを使用することが多いようです。

採物神楽(出雲流神楽)

出雲国・佐陀神社が源流の神楽です。これは佐陀神能と呼ばれるもので、取り替えた御座を清める採物舞と日本神話を劇化した神能となり、演劇性・娯楽性を高めた神楽となっています。現在では中国地方を中心に全国に広がっており、演劇としても見応えのある神楽となっています。

演目は古事記・日本書紀にある神話を題材としており、日本武尊の大蛇退治の物語である「大蛇」や、神楽の起源となる天鈿女命の神話、「岩戸」などがあります。

衣装・面は他の神楽とは一線を置くほど派手で煌びやかなものが多く、その物語に合わせた登場人物を演出しています。この衣装・面の演出が採り物神楽の最大の特徴と言っても良いでしょう。

湯立神楽(伊勢流神楽)

湯立と神楽が結びついたものになります。伊勢外宮の摂末社の神楽役が行ったものが全国に広まったとされています。

湯立とは神前に大きな釜を据えて湯を沸かし、巫女が笹や幣串を使い、自身や周囲に振りかけ、祓い清める儀式です。

舞は巫女や神職が行うことが多く、それぞれの正装である、白衣・緋袴と衣冠・狩衣・浄衣などになります。巫女は清めの儀式のため、神社によって白袴を使用し、全身白の衣装を使用する所も多いようです。

獅子神楽

獅子舞の一種で、獅子頭をご神体として各地を巡り、祈祷や御祓を行います。

東北地方の「山伏神楽」や伊勢地方の「太神楽」などの種類があり、東北地方では霊山とされる山々があり、この地の山伏が村々を巡り祈祷を行っていたものと、伊勢神宮や熱田神宮の神人が神札を配りながら竈祓いや悪魔祓いをしていました。太神楽は余興として曲芸なども披露していたため、芸能・娯楽としての一面も持っていました。

舞は各家々を回りながら舞うことからアドリブで舞われることが多く、舞台で行われる場合は「弊束の舞」や「剣の舞」、「くずしの舞」などその地方によって型があり、様々です。

ご神体となる大きな獅子の面をかぶり、1人で舞う場合と2人以上で舞う場合があります。またその他の登場人物として、「天狗」なども一緒に舞う所もあります。

【まとめ】神楽の種類について

  • 神楽は神道での神に奉納するために奏される歌舞。
  • 宮中で行われる御神楽と民間で行われる里神楽に分類される。
  • 御神楽は非公開となっており、通常見ることはできない。
  • 里神楽は神社で行われ、一般的に神楽と呼ばれる。
  • 里神楽はその中でも巫女神楽・採り物神楽(出雲流神楽)・湯立神楽(伊勢流神楽)・獅子神楽の4つに分類される。

一言で神楽と言ってもその生い立ちから地方によって様々に変化し、伝承された神楽はたくさんの種類に分類され、現在も新しい文化を取り入れながら受け継がれているのです。ここで紹介した神楽の他にも全く違った神楽を行っている地方もあるかもしれません。

この種類を頭に入れて、どこの地方を源流とした神楽なのか考えてみるのも一興だと思います。

永い歴史を持つ神楽を見ながら当時の人々は何を願い、どのような気持ちで神楽を舞ったのか思いをはせてみてはいかがでしょうか。

 

元巫女による古式巫女舞をベースにした舞はこちら