自然崇拝とは?アニミズムとの違い、日本と海外との違いは?
自然崇拝とアニミズム。同じ意味じゃない?と思ってしまいますが、似て非なる言葉です。
それぞれの言葉を整理し、
- 自然崇拝が日本の中でどう受け入れられているか
- 海外ではどうか
を探っていきます。
読み終えたころには、自分の中の自然崇拝という感覚がはっきり自覚できていると思います。
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自然崇拝とアニミズムの違い
まずは、自然崇拝とはどういうことかを確認します。
その上で、アニミズムとの違いを整理し、日本古来の宗教観・自然観についてみていきます。
自然崇拝は、自然物・自然現象が対象
自然崇拝とは
- 自然物・自然現象を対象とする崇拝
- もしくはそれらを神格化する信仰の総称
のことです。
対象としては、
- 天空
- 大地、山、海
- 太陽、月、星(星辰崇拝)
- 雷、雨、風などの気象
- 樹木、森林 (神奈備)
- 動物(特に熊、狼などの猛獣)
- 水、火、岩石
などがあります。
天神とか、雷神とか、聞いたことはないでしょうか。ああいった気候や自然現象を対象化し、敬うことが自然崇拝と言えます。
「敬う」とは違う感覚でしょうが、昔、ドリフターズのコントで「雷様」というコントがありました。角が生え、トラ模様のパンツをはいた鬼のような雷様が、雲の上でコントを繰り広げるあれです。
おそらく雷神がモチーフになっていると思いますが、お茶の間で親しまれたキャラクターのひとつです。自然崇拝は、私たちに馴染みのある感覚なのだと感じます。
次に、この自然崇拝は、アニミズムとはどういった点が違うのかを確認していきます。
自然崇拝とアニミズムの違い
アニミズムとは
- 万物に宿る精霊を崇拝対象とする考え方
のことです。
自然崇拝はこのアニミズムとも関係が深いですが、アニミズムの原初的な形と考えられています。
なぜなら自然崇拝は
- 精霊でなく自然物・現象そのものを崇拝対象としている
- 自然と超自然的存在を区別しない場合も多い
- 特定の自然物・現象だけを尊重すると考えられている
からです。
どういうことからと言うと、例えばアニミズムであれば、トイレの神様や、かまどの神様など、モノにも霊的なものが宿ると考えます。自然崇拝は、自然物が対象になるので、人工物は対象になりません。
そして、アニミズムは霊的なものを信仰する点でも少し異なります。
例えば、「もののけ姫」にコダマというキャララクターが出てきます。あれは森の精霊と考えれらていますので、アニミズムに当てはまるといえます。
- 森自体を神格化するのであれば自然崇拝
- 森の精を信じるのであればアニミズム
です。
このように、似ていますが、少しニュアンスが異なります。
まとめると
自然崇拝は
- アニミズムの原始的な形
- 自然物・現象に対象が限定されている
- 自然物・現象そのものが崇拝対象
アニミズムは
- 万物に精霊が宿ると考える
- 万物に宿る精霊が崇拝対象
ということになり、崇拝の対象が違うのだということが分かります。
参照:自然崇拝
それでは次は、自然崇拝が「神道」の源であるという考え方について説明していきます。
神道の源
神道とは
- 日本の宗教
- 教典や具体的な教えはなく、開祖もいない
- 神話、八百万の神、自然や自然現象などにもとづくアニミズム的・祖霊崇拝的な民族宗教
- 古代日本に起源を辿ることができるとされる宗教
のことです。
伝統的な
- 民俗信仰
- 自然信仰
- 祖霊信仰
を基盤に、豪族層による中央や地方の政治体制と関連しながら徐々に成立しました。
また、日本国家の形成に影響を与えたとされている宗教です。
参照:神道
元々日本の宗教観として、自然崇拝やアニミズムの要素がありました。
そこに、外国から仏教という新しい宗教が入ってきたために、元々あった信仰の形を体系化する必要が出てきました。そこで作られたのが「古事記」や「日本書紀」です。
仏教が入ってきてからは、神仏の2本柱が日本の宗教観になりますが、時代による変容をへて「国家神道」などの概念も生まれてきます。
このあたりは非常に複雑でややこしいですが、オリエンタルラジオの中田さんが面白おかしく日本の神仏の関係性、神話を含む古事記の面白さをyoutubeでまとめていますので、参考までにそちらもご覧になると面白いと思います。
まとめると、日本の宗教神道は、自然崇拝やアニミズムの考え方が根本にあると言えます。
日本古来の宗教観、自然観
日本人の宗教観としては、自然の中に神々が宿るとする自然崇拝やアニミズムの考え方がありました。
「古事記」の中では、神話として、数多くの神々が出てきます。太陽の神、火の神、など自然に関する神様もたくさん出てきます。稲作や農耕、漁業などを通じ、自然との関わり強く生活してきた日本人は、自然の恵みも感じる一方、自然の猛威も肌で感じてきました。その自然現象に対して、神の存在を感じ、自然物を神としてまつるようになっていったと考えられます。
さて、ここまでで自然崇拝とはそもそもどういう考え方かを整理し、アニミズムとの相違点を確認しました。日本に広く浸透している宗教としての神道の起源になっていることにも触れました。
次に、このような自然崇拝やアニミズムが生まれる理由となった、日本の自然観・自然崇拝の源泉は何かを考え、まとめていきたいと思います。
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日本の自然観、自然崇拝の源泉
豊かな日本の自然環境
日本は、環太平洋造山帯に属し、国土のおよそ75%を山地が占めています。国土面積の割に山が多いことで、川は世界に比べて急流であり、海までも近くなっています。さらに島国であり、周りは全て海に囲まれています。
その為、山・川・海が割と身近にあり、全てがそろっていることも珍しくありません。
私は瀬戸内に住んでいますが、海外旅行へ行った時、改めて日本でいかに自然に囲まれて過ごしていたか実感しました。
確かアジア諸国だったと思いますが、空港から主要都市に向かう高速道路の窓からは、見渡す限りずーっと広大な平地が続いていました。海も山も川も見えない時間がこんなにも続くのだと驚いたのを覚えています。
地震や川の氾濫、山への恐れ、自然と寄り添い暮らす民族だからこそ、自然を敬う心も養われたのではないかと思います。
おそらく古代の日本人は、私たちよりもっと自然を身近に感じ、畏怖も感じていたのではないでしょうか。「もののけ姫」に出てくるシシガミの森も、人の手が入る前の自然に対する恐れ・敬いが非常に表れていると思います。
日本人は恐らく、その特徴的な地形からも太古より豊かな自然に囲まれ、自然と寄り添い、自然とともに生きていく感覚が強かったものと考えられます。
そこで自然崇拝という考え方も育まれていったように思います。
一方、海外では自然はどのようにとらえられているのでしょうか。
海外の反応と観念の違い
一概には言えませんが、イスラム教やキリスト教などの一神教と、日本古来の神道とは、自然に対する考え方が大きく異なると考えられています。
それは、旧約聖書の神の言葉から解釈されています。
神は6日間で世界を創造し、6日目に神に似せて人を作り、これに自然を管理・支配する役を与えたと考えられています。神いわく
- 我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう
と言います。
つまり、イスラムやキリスト教的な考えでは
- 人と自然界に厳格な区別がある
- 自然は人間に支配されるべきものと定義されている
のです。
参照:【世界が注目!】絶対に知っておきたい誇るべき日本の宗教観
確かに、私たちの感覚では、「自然は人によって支配される」という感覚は馴染みにくいように思います。
そばにある自然といかに寄り添っていくか、という考え方の方が自然です。
【まとめ】自然崇拝について
これまで見てきた内容をおさらいします。
自然崇拝は
- アニミズムの原始的な形
- 自然物・現象に対象が限定されている
- 自然物・現象そのものが崇拝対象
アニミズムは
- 万物に精霊が宿ると考える
- 万物に宿る精霊が崇拝対象
自然崇拝のもとになったのは
- 日本の自然豊かな背景がある
海外のように
- 自然は人間に支配されるものという感覚がない
ことが自然崇拝につながっている
ということになります。
このように改めて考えてみるまで「自然崇拝と言われても、私たちにそんな感覚あるかな?」と思っていました。ただ、海外との比較や、具体例を見る中で、「自分の中に自然に身についている感覚だ」と感じられるようになりました。
海や山や川を見る時、穏やかな気持ちでこの自然に対する敬意を実感しながら景色を堪能すると、また一層感慨深いものがあるかもしれません。
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