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なぜ沖縄にはシャーマンが多く存在するのか?ユタとノロについて

沖縄 シャーマン

「なんくるないさー」等の特徴的な言葉遣い、澄んだ海と美しい自然。日本国内でありながら、どこか異国情緒を感じるリゾート地。すぐにでも旅行に行きたい、とかきたてられるのが沖縄ですよね。

そんな旅行地としての一面とは違って、沖縄では今もなお、シャーマンと深い関わりをもって生活する人々がいます

今日は、普段皆さんが意識しない沖縄の信仰にスポットを当て、

  • 沖縄の人々とシャーマンとの関わり

についてご紹介したいと思います。

読み終えたころには、沖縄の知らなかった一面を確認するための旅行に行きたいという思いが湧いてくるかもしれません。

 

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沖縄のシャーマンについて知りたい

まずは、沖縄にいるシャーマンの「ユタ」とはどういう人なのかを取り上げ、同じく沖縄のシャーマンである「ノロ」についても解説し、両者の違いを見ていきましょう。

沖縄のシャーマン「ユタ」

「ユタ」とは、沖縄県と鹿児島県奄美群島で主に活躍する、民間霊媒師(シャーマン)であり、霊的問題のアドバイス、解決を生業とする人のことです。

凡人にはなし得ない、霊界のすがたや動きを見通すことのできる霊能力者であると考えられています。多くの場合が女性です。

部落や村落の個々の家や家族に関する

  • 運勢(ウンチ)
  • 吉凶の判断(ハンジ)
  • 禍厄の除災(ハレー)
  • 病気の平癒祈願(ウグヮン)

などを見てくれる人です。

 

以下の動画では、ユタへ具体的な相談事をするシーンが取り上げられています。

動画では、神の声を聞くことで相談者にアドバイスを行っています。ユタはこのように、カンダーリ(神がかり)を経験した霊感の強い女性がなるようです。

そして、この動画からも分かるように、ユタは神の声を聞くというだけでなく、人々にとって、心理カウンセラーとしての役割も兼ね備えています。正しい・正しくないの二者択一の選択肢ではなく、共に想うエンパシーの考え方で、第3の選択肢を提供するというユタの知恵があります。

 

ユタがどのようなものか、イメージ出来ましたでしょうか。

次は、「民間巫女としてのユタ」について説明していきます。

民間巫女、霊媒師の「ユタ」

後ほど詳しく説明しますが、沖縄には、「ノロ」というシャーマンも存在します。ノロは祭祀を司る公的なシャーマンです。ユタが地元密着型の占い師のような存在で、人々に寄り添っているのとは対照的です。

地元密着型だからこそ、沖縄の人々の中でユタの方が根付いているのですね。

 

沖縄の人々がどういうときにユタのもとを訪れるのか、もっと詳しくみていくと次のような場面があります。

  • 新年にその年の初運勢(ハチウンチ)をみてもらう
  • 病気や傷害など健康上の問題の相談。医師の診断で治らない場合に、その原因を正すための判断(ハンジ)をしてもらう
  • 家庭内や部落内の交際や親族関係に気がかりがあるものの判断、また不吉な予感がすると訪れたものへの判断
  • 夢分析
  • 商売・農作業・漁業などの事業に不運が続くとき
  • 新しく事業を起こすとき、仕事換えがあるとき、船の新造、店舗の開店などの際に先行きを占ってもらう
  • 家の新改築の際の風水見(フンシーミー)
  • 紛失物があった際に、その所在を占ってもらう
  • 結婚の際、相性などの適・不適を占ってもらう
  • 元祖事(グヮンスグトゥ。供養・位牌祭祀など先祖に関した事柄)に不振が生じた場合、正しい在り方を判断し指示してもらう
  • 洗骨や移葬の際の死霊供養
  • 抜霊(ヌジファ)、魂分(マブイワカシ)、若焼香(ワカジューコー。1〜7年忌)、終わり焼香(ウワイジューコー。13年忌、25年忌、特に33年忌)など死者供養の回向
  • 男系継承者が廃絶した場合、正しい継承者を捜し求めるために先祖に祈願して判断してもらう
  • 魂籠(マブイグミ)の呪術や、魔物(マジムン)・生霊(イチジャマ)などの悪霊邪霊の祟りを祓除するための呪法
  • 「旅立ち」の際の安全祈願

参照:wikipedia

ありとあらゆる場面で人々はユタを頼りにしていることが分かります。

 

たまたま、大学時代の先輩で沖縄出身の方がおり、ユタについて聞いてみました。世代は30代半ばぐらいの方です。

「幼稚園の時に、おばぁと一緒にユタのお家に行ったことがあるよ、なんとなくうろ覚えだけどね。おばぁ世代(90代)はユタのところへ行ってたよ。家族の健康とか仕事のことをみてもらってたよ。ユタが〇〇ちゃん(先輩)のことを、△△って言ってたから、きちんとご飯食べて、栄養取りなさいよと、忠告を受けることもあったよ。私たちの世代は、(上の世代ほど)ユタを強く信仰している訳じゃないと思うけど、占い師にみてもらう感覚でユタにみてもらう人はいるみたいだよ。」

と教えてくれました。伝統は世代が進むにつれて少しずつ薄れてはいるようですが、沖縄の人々の中に、ユタという存在は当たり前のものとして、存在しているようです。

 

それでは次は、ユタと対照的なシャーマンである「ノロ」についてみていきます。

女神官「ノロ」「神人(かみんちゅ)」

ノロは、奄美諸島・沖縄諸島で村落の祭祀を司る女性祭祀者です。ノロは琉球の神々と交信することが出来る存在であり、祭祀の間はその身に神を憑依し、神そのものになる存在とされています。そのため、神人(かみんちゅ)とも呼ばれます。

沖縄の宗教観はアニミズムと祖霊信仰にもとづいています。海の彼方のニライカナイと天空のオボツカグラに、太陽の神をはじめとする多数の神がいるとされます。ノロはこういった神々と交信できるとされています。

ノロは、15世紀の琉球王国で、王が祭政一致により支配を目的として巫女組織を制度化する中で配置されました。その為、公的な祭祀者という位置付けになるのです。

ノロは世襲制であり、19世紀の琉球国の解体により、公的な地位を失った為、新たなノロは誕生していません。ただ、子孫の方が今も地域に残る祭祀を細々と担っているようです。以下はその動画になります。

 

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ここまでで、沖縄にいるシャーマン

  • ユタ
  • ノロ

をご紹介しました。

次は、沖縄にシャーマンが多い理由についてみていきたいと思います。

 

沖縄にシャーマンが多い理由

沖縄でシャーマンが多い理由を、出生率や「医者半分、ユタ半分」と言われることわざ等から紐解いていこうと思います。

45年連続「出生率1位」

ユタは主に、沖縄と奄美大島にいます。

奄美大島は、江戸時代まで仏教やキリスト教がほとんど存在しない地域でした。そのため、今なお仏教の僧侶よりもユタの勢力がはるかに大きいと言われています。しかし、少子化などに伴い、ユタが集落からいなくなる時期がくると予想されています。現に、活動の拠点を東京などの本土に移す人もいるようです。

一方、沖縄は2018年の県人口動態統計で、人口1,000人当たりの出生率11.0%と、都道府県別で45年連続1位となっています。過疎化にあえぐ奄美と対照的です。土着のシャーマンの世界も、景気や人口動態に大きく影響を受けていると言えそうです。

次に、ユタに対する依存度から沖縄でのシャーマンの普及の考えます。

「ユタ依存症」

沖縄では、奄美以上にユタへの依存度が高いそうです。

ユタをご紹介した動画にもありましたが、ユタは心理カウンセラーとしての側面も兼ね備えています。人々が悩みに突き当たった時、解決できない課題がある時、心を軽くしアドバイスをもらう存在です。「医者半分、ユタ半分」と、昔からのことわざにもあります。目に見える部分で解決できないものは、ユタに昔から頼ってきたのです。

このことわざについて、もう少しみていきましょう。

「医者半分、ユタ半分」

沖縄には「医者半分、ユタ半分」ということわざが昔からあり、個人レベルや、共同体レベルで、人為を尽くしても解決できない問題があった場合、その最終的決断を下すきっかけをユタの吉凶判断(ハンジ)に求めようとします。このことわざからも、いかにユタが沖縄の人々の生活に密着してきたかが分かります。

古くから人の生と死に関わる部分を担ってきたことも、沖縄にシャーマンが根付く理由になり得そうです。

最後に、ノロとユタの役割についてもう一度見ていきます。

浄に関わるノロ、不浄に関わるユタ

ノロが聖地の司祭をするにあたり

  • 死穢や婦人の血の忌み
  • 出産の不浄

を忌避するのに対して、ユタは全く反対に

  • 死者儀礼
  • 死霊供養

に密着しました。両者のすみわけとして

  • 浄(神の領域)はノロ
  • 不浄(死の領域)はユタ

と言われています。ただ、地域差があったり、祭祀がユタを兼ねる場合もあったりと厳密に隔てることは難しい場合もあるようです。

しかし、これまで説明してきたように、両者とも沖縄民間信仰の底辺を流れるシャマニズムであり、沖縄の民間信仰を支える車の両輪なのです。

【まとめ】沖縄のシャーマンについて

ここまで、沖縄のシャーマンについて

  • 地元密着型シャーマンのユタ
  • 公的なシャーマンのノロ

と沖縄に根付く両輪である民間信仰をご紹介しました。

そしてシャーマンが分布する沖縄・奄美大島でもとりわけ沖縄でシャーマンが多い理由についても考察してきました。

本土に住む私たちには、シャーマンの存在は身近ではありません。ただ、沖縄の生活に密着し、共に想うパートナーとして寄り添ってきたユタの存在は十分理解できたのではないでしょうか。

 

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