神道と仏教の関係性と違いは?世界的にも珍しい関わり合う宗教
新年の祝賀や葬儀、節分や七五三などの宗教行事は、日本人の生活に深く浸透している為多くの人は宗教というものを意識しないで行っている方が比較的多いのではないでしょうか。
実はこういった行事には2つの宗教が入り混じっています。それが古来より日本人が信仰してきた「神道」と「仏教」です。この2つは何が違うんでしょうか。
今回は、
- 神道と仏教の関係性について
- 神道と仏教の違い
2つに分けて詳しくご紹介したいと思います。
この2つを理解すると、神道と仏教の違いが分かり、正しい参拝方法が建物によって違うことも知ることができますよ。
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神道と仏教の関連性
まずは基礎知識を次の4つの項目に沿って確認します。
- 神道とは
- 仏教とは
- 神仏習合とは
- 古代神道とは
では詳しくみていきましょう。
神道とは?
神道について、Wikipediaでは次のように定義されています。
日本の宗教。惟神道(かんながらのみち)ともいう。教典や具体的な教えはなく、開祖もいない。神話、八百万の神、自然や自然現象などにもとづくアニミズム的・祖霊崇拝的な民族宗教である。
自然と神とは一体として認識され、神と人間を結ぶ具体的作法が祭祀であり、その祭祀を行う場所が神社であり、聖域とされた。明治維新より第二次世界大戦終結まで政府によって事実上の国家宗教となった。この時期の神道を指して国家神道と呼ぶ。(引用:Wikipedia)
神道には明確な教義や経典がありません。それは自然と神は一体だという神道の考えが由来しています。生きていく上で必要な水や火を与えてくれる一方命を奪う危険もある自然と一緒に生活していく中で、私たちの祖先は自然を「抗えることができない神々の働き」だと考えるようになったのです。
おばあちゃんやお母さんから紙やコップ、鉛筆一本にも神が宿っているから大切にしなさい、という話を聞いたことがあるかもしれません。それも「自然を大切にしている気持ち」から生まれたのです。
仏教とは?
次に仏教について、Wikipediaでは次のように定義されています。
インドの釈迦(ゴータマ・シッダッタ、もしくはガウタマ・シッダールタ、ゴータマ・シッダールタ)を開祖とする宗教。仏陀(仏、目覚めた人)の説いた教えである。
世界的にもキリスト教・イスラム教に次いで幅広い国々へ広がっており、世界宗教の一つとみなされている。特に東アジアで広まっており、日本でも多くの信徒がおり、出版物も多い。
その教義は苦の輪廻から解脱することを目指している。原因と結果の理解に基づいており、諸々の現象が縁起するとされる。(引用:Wikipedia)
上記に書かれているとおり仏教発祥の地はインドです。日本仏教のはじまりは538年(欽明天皇の時代)に伝来したとされ、のちに聖徳太子によって仏教の受容が広まり日本に根付いたとされています。以後、多くの僧侶が仏教を学び仏陀の教えに基づいて布教をし現在まで続いています。
神仏習合とは?
神道と日本の仏教を融合したものを言います。いつ頃からそのような形になったのかは明確にはなっていませんが、平安時代ごろから理論的に説かれるようになったと言われています。
西洋や他アジアでは宗教によって起こった争い(宗教戦争:三十年戦争etc)が多い中、2つの宗教を受け入れ融合させたケースは珍しいです。
なぜそのようなことができたかというと、次の3つが考えられます。
- 神道は多神教に類する宗教のため他の宗教を受け入れる柔軟性があった
- 仏教の考え方が日本人の考え方・性格・生活に合っていた
- 仏教にある「五明」と呼ばれる5つの専門領域の一つである「医方明」は当時は最先端医療であったため非常に魅力的であった
結果それぞれの考えの良いところを融合させた神仏習合ができ「仏様が本来の姿で日本の神様は化身である」という考えが生まれました。
古代神道とは?
神仏習合の対になる考えとして「古代神道」というものがあります。
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日本において外来宗教の影響を受ける以前に存在していたとされる宗教をいう。純神道、原始神道、神祇信仰ともいう。通常はこちらを古神道という。
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江戸時代の復古神道の略称。
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江戸時代の復古神道の流れを汲み、幕末から明治にかけて成立した神道系新宗教運動。仏教、儒教、道教、渡来以前の日本の宗教を理想としている。神道天行居や出雲大社教、神理教、古神道仙法教などの教団が存在している。大本などに影響を与えた。(引用:Wikipedia)
すなわち、他の宗教等から影響を受けていない神道のことを言います。
実は神道は明治時代に入る前まであやふやなものでした。そこで明治政府の意向もあり、「他の宗教に影響される前に信仰していたことこそが自然で本当の教えがある」という考えのもと神道の確立を目指します。神代文字で書かれた古文書を学んだりした人達が、古代の日本人がしていた儀礼、おまじないなどを編み出していったのです。
以上より、
- 仏教と神道の大きな違いは、発祥と信仰の対象
- 仏教と神道が合わさったものが「神仏習合」
- 純粋な神道が「古代神道」
だということがわかりました。
しかし
- 聖職者はいるのか、違いはあるのか
- 参拝方法に違いはあるのか
などまだまだ疑問が残ります。
次では、その違いを解明していきますよ。
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神道と仏教の違い
以下7つの項目に分けてより具体的に「違いはどこなのか」を掘り下げていきます。
- 信仰対象
- 目的
- 聖職者
- 建物
- 参拝方法
- お墓
- 用語
それでは見ていきましょう。
信仰対象
- 神道は八百万の神様
神道は複数の神様を信仰する多神教です。その数の多さから「八百万の神」と呼ばれています。「八百(やお)」は数が極めて多いことを表し、「万(よろず)」はさまざまであることを表します。
さまざまであることを表す「万」という言葉が使われているとおり、太陽や月、火や水などの自然物から、お米や物、井戸や屋根など身の回りにあるものまで神格化しています。
- 仏教は仏陀、その他の仏、etc
仏教はキリスト教やイスラム教のように一つの神を信じる一神教ではなく、あくまでも「修行によって悟りを開き、解脱すること」を目的とします。
しかし、時代とともに分かりやすくするために仏陀やその他の仏などが信仰対象とされるようになりました。
目的
- 神道
神道は神を祀り、神とされるものを大切にすることで神からのご加護を受けることを目的とします。御供物をしたりして神を祀るのも恵みを得るという目的や天災を鎮める目的があります。
- 仏教
仏陀(悟りを開いた人)の教えに従い、修行によって悟りを開き解脱することを目的とします。解脱とは煩悩に縛られていることから解放され、何度も生まれ変わる輪廻転生の輪という苦から修行によって悟りを開いて抜け出すことを言います。
聖職者
- 神道は神職(神主)、巫女
神道の聖職者は、神社にいる烏帽子をかぶり袴をまとった「神職(神主)さん」や「巫女さん」です。
神道にはキリスト教や仏教のように明確な教義が存在しないため、参拝者に対する説教は行いません。神に奉仕し祭儀や神を祀る役割を担う人です。
- 仏教は僧(お坊さん)
仏教の聖職者は、袈裟を着た頭を丸めた「お坊さん」です。お坊さんはお寺でお経を唱えることや説教を基本的な仕事としています。その他にも葬儀の場でお経をあげたり、寺院や墓地の管理なども行っています。
建物
- 神道は神社、神宮(鳥居+参道+社殿)
神社は一般的に入り口に「鳥居」があり、鳥居の先にある「参道」の脇には手と口を清める「手水舎」、その先には神様が祀られている「本殿」、という造りになっています。
神様が祀られている参拝場所としての役割を持っています。神を祀る場所である神社ですが御神体は拝見できません。
- 仏教はお寺
入り口に「山門」があり、元々は仏陀そのものを表していた「塔」と本尊の仏像を安置する「金堂」などを内部に置く造りになっています。
お坊さんが仏教修行を行うための場所ですが、一般の人に仏教の教えを説く場でもあります。神社とは違い、お寺ではご本尊を拝見し祈りを捧げることができます。
参拝方法
- 神道では、二拝二拍手一拝
神社の参拝は、穢れを清めるためのお祓い方法の一つに数えられるもので「今までの穢れを清めて、心機一転の決意表明をする」という意味合いがあります。
- 仏教では、合掌
お寺ではお賽銭を入れた後、拍手は打たずに胸の前で合掌するスタイルの参拝方法が一般的です。また、数珠やお線香を焚くのは仏教以外の宗教行事では用いられないものです。
お墓
- 神道では、神社にお墓は建てられない
神道の教えでは死は穢れとされているため、神社にお墓を建てることはありません。公営霊園や、民営霊園に建てる場合がほとんどです。
また、神式では「◯◯家奥津城(奥都城)」または「◯◯家先祖代々霊位」と刻まれることが一般的です。
- 仏教では、お寺に墓地を建てる
お寺に墓地があるのを見たことがある方や、お盆の際にお寺にお墓まいりをする方もいらっしゃるのではないでしょうか。お寺には寺院墓地と呼ばれる場所があり、そこにお墓を建てます。
しかし、そのお寺に建てる場合はそのお寺の檀家にはる必要があります(昨今は檀家になる必要がないところや宗派不問のお寺も増えているようです)。
また、「◯◯家之墓」「先祖代々之墓」や、これに加えて梵字が彫られているもの、「南無阿弥陀仏」「南妙法蓮華経」など宗派のお題目・名号が多く見られます。
用語
- 神道
亡くなった際、神道では帰幽(きゆう)と言います。おみくじ・神楽・参道・神前結婚式など神社や神宮で行われている行事なども神道用語とされています。
- 仏教
仏教では亡くなった際、成仏や往生と言います。成仏は漢字の通り「仏になる」ことを表し、煩悩や苦悩がなくなって幸福になることを言います。また、退屈(仏道修行の厳しさに屈し、退いてしまうこと)、達者(真理に到達した覚者を表す言葉)など日常の中でも使われている言葉も多くあります。
【まとめ】神道と仏教の関連性と違いについて
では最後にまとめに入ります。
神道とは?
- 明確な教義や経典がない
- 生きていく上で必要な水や火を与えてくれる一方命を奪う危険もある自然と一緒に生活していく中で私たちの祖先は「自然に抗えることができない神々の働き」つまり自然と神は一体だという考えが生まれた
仏教とは?
- 仏教発祥の地はインド
- 日本仏教のはじまりは、538年(欽明天皇の時代)に伝来したとされ、のちに聖徳太子によって仏教の受容が広まり日本に根付いた
神仏習合とは?
- 神道と日本の仏教を融合したもの
- いつ頃からそのような形になったのかは明確ではないが、平安時代ごろから理論的に説かれるようになったと言われている
古代神道とは?
- 他の宗教等から影響を受けていない神道のこと
- 明治時代「他の宗教に影響される前に信仰していたことこそが自然で本当の教えがある」という考えのもと神道を確立しようと神代文字で書かれた古文書を学んだりした人達が古代の日本人がしていた儀礼、おまじないなどを編み出していったもの
信仰対象
- 神道は八百万の神様
- 仏教は仏陀、その他の仏etc
目的
- 神道は神を祀り、神とされるものを大切にすることで神からのご加護を受けることを目的とする
- 仏陀(悟りを開いた人)の教えに従い、修行によって悟りを開き解脱することを目的とする
聖職者
- 神道は神職(神主)、巫女
- 仏教は僧(お坊さん)
建物
- 神道は神社、神宮(鳥居+参道+社殿)
- 仏教はお寺
参拝方法
- 神道では二拝二拍手一拝
- 仏教では合掌
お墓
- 神道である神社では建てられない
- 仏教はお寺に墓地を建てる
用語
- 亡くなった際、神道では帰幽(きゆう)と言います。またおみくじ・神楽・参道・神前結婚式など神社や神宮で行われている行事なども神道用語とされている
- 仏教では亡くなった際、成仏や往生と言います。また退屈(仏道修行の厳しさに屈し、退いてしまうこと)、達者(真理に到達した覚者を表す言葉)など日常の中でも使われている言葉も多くある
仏教と神道は日頃あまり目にしない言葉ではないでしょうか。しかし互いの違いを見比べてみると、意外にも両方の宗教が私たち日本人の生活に自然と溶け込んでいることがよく分かりますよね。お盆や初詣などで神社、お寺に訪れた際はそれぞれの宗教を考えながら回ってみると新たな発見が見つかるかもしれまんよ。
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