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倭舞(やまとまい)とは?和舞、大和舞とも呼ばれる男性由来の舞

倭舞 巫女舞

巫女舞と一口に言ってもその種類は様々です。

起源は日本最古の書物である「古事記」、「日本書紀」に登場する神話の世界まで遡り、以来1300年以上経った現在まで受け継がれ、また変化を加えて舞われ続けています。

そんな巫女舞の中から、ここでは「倭舞(やまとまい)」について、その歴史や構成、今でも見られる神社をご紹介していきます

倭舞の歴史や舞について知ることで、倭舞が承継されている神社のこともより知ることができるようになりますよ。

 

最も古く、最も新しい舞はこちら

倭舞(やまとまい)について

由来は?

倭舞は古代の国風歌舞のひとつです。「和舞」、「大和舞」とも記され、大和地方の風俗舞踊が起源とされています。

最古の上演記録として、「宝亀元年和舞」(西暦771年)とあります。もともと百済系の和氏の舞であったものが、次第に大和地方の舞にすり替えられたものと言われています。

応仁の乱(1467〜1477年)で伝承が途絶えてしまいますが、280年後の1748年の「大嘗会(天皇が即位後初めて行う収穫を神に感謝する祭)」で再興されました。現在の宮中雅楽の倭舞はその後に改訂されたものになっています。11月に行われる鎮魂祭でも演じられていますが、こちらは非公開となっています。

元々は男性の舞でしたが、改訂やいろいろな舞の影響を受けながら、現在では巫女舞として舞われることが多くなっています。

人数は?

現在では神社によって違いはありますが、舞人は4人が一般的になっています。こちらに歌と雅楽の演奏を行う「歌方」が4〜6人で構成されます。神社によっては舞人は2人、ないし6人というところもあるようです。

装束は?

4人で舞う場合、2人は赤、もう2人は緑の「袍(ほう)」を着用します。袍とは丸襟になっている上着で日本では朝服の上に着る正装になります。現在での巫女舞では一般的な巫女衣装の千早に袴で舞われることも多いようです。

 
 
 
 
 
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jasminecoco963(@jasminecoco963)がシェアした投稿

歌方の装束は「浄衣(じょうえ)」に「立烏帽子(たてえぼし)」となります。立烏帽子とは中央部を折らない格式の高い烏帽子のことです。

 
 
 
 
 
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香川県神道青年会(@kagawashinsei)がシェアした投稿 – 2017年 7月月25日午前5時47分PDT

 

舞具は?

通常は右手に「笏(しゃく)」を持って舞います。

 
 
 
 
 
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弘誓寺(@guzeiji)がシェアした投稿 – 2020年 4月月1日午前5時30分PDT

 

巫女舞では「扇(おうぎ)」や「榊(さかき)」を持って舞うことも多いようです。

伴奏楽器は?

  • 龍笛(りゅうてき)

竹で作られた横笛。音域が広く、低い音から高い音まで響き、その音色は「舞い立ち昇る竜の鳴き声」と例えられています。

 
 
 
 
 
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古美術上田(@ueda_arts)がシェアした投稿 – 2020年 5月月2日午後8時57分PDT

 

  • 篳篥(ひちりき)

葦舌(した)と言われるリードを使い、音を奏でる管楽器です。音量が大きく、雅楽では主旋律を担当することが多いです。雅楽でよく使われる楽器で笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)と合わせて「三管(さんかん)」と呼ばれています。

 
 
 
 
 
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ドゥドゥク JAPAN(@duduk.japan)がシェアした投稿 – 2020年 3月月26日午後11時40分PDT

 

  • 和琴(わごん)

琴の種類のひとつ。日本最古の楽器と言われていて、雅楽の楽器の中で格が高く、位の高い人が演奏します。「大和琴(やまとごと)」や「東琴(あずまこと)」とも呼ばれます。

 
 
 
 
 
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Haguro Emi(@echigo33natuhime)がシェアした投稿 – 2019年 9月月30日午前6時00分PDT

 

宮人(みやびと)の輿(こし)に挿したる榊葉(さかきば)を我と取り持ちて万代(よろずよ)や経(へ)む

と、演奏の間に倭歌が歌われ、この間に倭舞が舞われます。

 

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以上が倭舞の基本的な情報になります。

ここからは現在倭舞が行われている神社についてご紹介します。

各所で受け継がれていく倭舞

大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ):神奈川県伊勢原市

大山は「あめふり山」とも呼ばれ、古くから雨乞い信仰の中心地でもあります。御祭神の「大山祇大神(おおやまつみのおおかみ)」は山の神、水の神として信仰されています。

こちらでは11曲の神楽が継承されています。明治6年(1873年)に大山阿夫利神社の神職、権田直助(ごんだなおすけ)が奈良の春日大社の富田家から伝授されたものです。

舞は2種類。4人で舞うものと、六位舞(ろくいまい)と呼ばれる1人で舞うものがあります。腰に刀を差し、手には榊や扇を持って舞い、楽器は篳篥、琴、横笛、笏拍子が使われます。

毎年8月の秋期例大祭に地元の子供達による倭舞を観ることができます。

八坂神社(やさかじんじゃ):山形県東村山郡

京都の八坂神社から文明4年(1472年)に分祀した神社です。

毎年4月の例大祭で地元の女子児童によって倭舞が奉納されます。巫女の衣装に身を包み、笏と五色布がついた鈴を持ち巫女舞が舞われます。

こちらでは「八坂神社倭舞教室」が平成18年に後継者を育成するために結成され、年間14回の練習会が開かれています。

伊勢神宮(いせじんぐう)三重県伊勢市

伊勢神宮の正式名称は「神宮(じんぐう)」と言います。

  • 「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」を祀る内宮(ないくう)
  • 「豊受大御神(とようけのおおみかみ)」を祀る外宮(げくう)

の他に14の別宮、43の摂社、24の末社、42の所管社があり、全てを含めて「神宮」と言います。

伊勢神宮でのご祈祷は御饌(ごせん)と御神楽があり、この御神楽で雅楽と共に倭舞が奉納されます。

こちらの倭舞は伊勢神宮のオリジナルでこちらでしか観ることができません。

装束は紅梅をさした「天冠(てんかん)」に緋色の「長袴」、白の「千早(ちはや)」となり、手には五色絹を飾った「榊」が使われます。

伊勢神宮の巫女は三重県内の高校を卒業した18歳からから奉仕し、5年間で定年となります。

【まとめ】倭舞とは

最後にまとめです。

  • 国風歌舞のひとつ。大和地方の風俗舞踊が起源
  • 11月の鎮魂祭で奉じられている
  • 神社によるが通常4人で舞う
  • 装束は2人ずつの赤と緑の袍を着る
  • 雅楽を演奏する歌方は浄衣に立烏帽子を着る
  • 舞具は右手に笏を持つ、神社によっては扇や榊が使われる
  • 伴奏楽器は龍笛、篳篥、和琴が使われる

巫女舞の種類はたくさん存在し、その舞ひとつひとつにそれぞれの意味があり、その地に住む人々の思いが重なって、今でも舞い続けられているのです。文化芸能として楽しむのも良いのですが、その舞の意味も調べながら鑑賞するとまた新しい巫女舞の世界が見えてくるかもしれませんよ。

 

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