悠久の舞とは何かをご紹介!意味や歌詞は?男舞と女舞がある?
神社を訪れると、白と赤の衣装に身をつつんだ女性たちに目を引かれます。厳かで時代を感じるような建築物の空間で艶やかさを感じる事ができますね。
「悠久の舞」は彼女たち巫女が舞う「巫女舞」と呼ばれ、神社の祭礼の際に奉納される神楽舞(かぐらまい)のひとつです。その優雅ないでたちと美しさは神様へ向けられた特別な舞いなのです。
「果てしなく長く続く」という意味の「悠久」と名付けられたその舞とは、どのようなものなのでしょうか。
ここでは「悠久の舞」について詳しくご紹介します。
この記事を読み終えた頃には、神社で見かける悠久の舞の意味や背景を理解して楽しめるようになりますよ。
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「悠久の舞」とは
神楽舞の起源は古く、古事記、日本書紀にある岩戸隠れで天鈿女命(あめのうずめ)が天照大神のために舞ったことに由来します。
以降、神事の際、神様に奏上するために舞を舞うようになったのです。
その後、神楽舞は継承されているものだけでなく、明治以降も新たに創作されています。「悠久の舞」もその中の一つです。
「悠久の舞」は、1940年(昭和15年)に開かれた「皇紀2600年奉祝会」の際、時の楽長 多忠朝(おおのただとも)によって作曲・作舞されました。
この時に一緒に創作されたのが「浦安の舞」で一般的にはこちらの舞が使われる事が多く有名ですが、
- 浦安とは「心が安らぐ」
- 悠久の「果てしなく続く」
と合わせ、二つで一つの作品なのでしょう。
当時は男子4人で舞われていて(男舞)、その後「悠久の舞」はほとんど舞われる事がなかったのですが、昭和39年、東京オリンピック開催の折、奉納されました。この時、多忠朝の長女 多静子(おおのしずこ)が女舞へ改作し、現在の「巫女舞」の形になったそうです。
男舞と女舞というのは、舞の型の違いになります。
男が踊るから男舞、女が踊るから女舞というわけではないのです。
男舞では、
- 獅子
- 殿様
- お坊さん
など。
女舞では
- 町娘
- 花魁
- 姫様
などが一般的で、それぞれの役になり切って踊るのです。
「悠久の舞」の歌詞は?
宏覚禅師(こうかくぜんじ)の和歌
世の末の 末の末まで我が国は よろずの国に すぐれたる国
が歌詞に使われています。
こちらは「愛国百人一首」にも選ばれている歌で、蒙古襲来の国難の折り、京都の岩清水八幡宮に捧げた祈祷文の末尾に書かれています。
「悠久の舞」で使われる装束、舞具は?
悠久の舞で使用される衣装と舞具はこのようなものが使われます。
装束
- 天冠(てんかん)
頭にかぶる飾り 神社によってその様相は様々です。死者につける白い三角の布も天冠と言います。
- 小忌衣(おみごろも)
着物の上に羽織る上着。白色で赤い結紐がついているものが一般的です。
- 単(ひとえ)
裏地のない着物。小袖、袴を着用したときに着る着物。昔は肌着として使用されていました。
- 濃い色の差袴(さしこ)
神職が履く袴。差貫の裾を切った切袴。
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神社で見かける白い着物に赤い袴という巫女の衣装に装飾を施したイメージでしょうか。神社によってそのデザインは変わってきます。
舞具
基本的に、菊花を手に持って舞います。
元々「悠久の舞」は秋の舞ですが、現在は春にも舞われることがあります。
このとき、舞具として「桜」を使用することもあります。
「悠久の舞」で使われる楽器は?
- 笙(しょう)
管楽器で17本の竹管を束ねて作られています。二又に分かれた形が特徴的で、鳳凰に似ていることから鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれています。
- 篳篥(ひちりき)
管楽器にひとつでサックスのように葦舌(した)と呼ばれるリードを使用する縦笛
- 龍笛(りゅうてき)
竹で作られた管楽器(横笛)音域が広く、その音色が、龍の鳴き声に喩えられたことが名前の由来となっています。
- 箏(そう)
琴と違い、弦の音程を「琴柱」と呼ばれる支柱で調節する弦楽器。
- 釣り太鼓
名前の通り、吊り下げた状態で鳴らす太鼓。
- 鞨鼓(かっこ)
鼓(つづみ)の一種。奏者に対して水平に置き、両面をバチを使って音を鳴らす。
どれも神楽舞の楽器としては定番ですが、これだけの楽器を使うことで菅、弦、打の旋律が音の深みを作り、和楽器の荘厳な音楽を作り出しています。
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悠久の舞はどこで見られるの?
日本全国の神社で祭礼の際に行われる神楽舞の演目に含まれる事があるようです。
時期はそれぞれ違うので、神社ごとに問い合わせてみて下さい。
基本的に神楽舞は「神楽殿」や「舞殿」と呼ばれる建物で行われるので、このような建物のある神社を探すと良いようです。
- 靖国神社(東京)
こちらでは、2月、4月、9月に「神楽の儀」という行事があり、神楽舞が披露されます。
- 神田明神(東京)
5月の「神田祭」で雅楽の演奏やお囃子と合わせて神楽舞も披露されます。
- 鹿島神宮(茨城)
流鏑馬や「白馬祭」が有名ですが、9月にある祭礼で神楽舞が見られます。
- 熱海来宮神社(静岡)
9月の「観月祭」で雅楽の演奏会の「越天楽」と巫女舞の「悠久の舞」が見られます。
- 諏訪大社(長野)
山から大木を曳き、大社の四隅に建柱する「御柱大祭」で巫女舞も披露されます。
- 住吉大社(大阪)
住吉神社の総大社で6月に御田植神事という田植えのお祭りがあります。五穀豊穣を願い舞が披露されます。
- 生田神社(兵庫)
4月に「氏子奉幣祭」という安全、繁栄を祈願する祭典で神楽舞や伝統芸能の奉納が行われます。
- 草津八幡宮(広島)
秋に行われる「例大祭」で舞楽や神楽舞が奉納されます。
- 太宰府天満宮(福岡)
9月に「神幸式大祭」という大きな催しがあり、神楽舞の奏上も行われます。水上舞台での舞は素晴らしい華やかさです。
- 宗像神社(福岡)
10月に「秋季大祭」で行われます。他にも漁船による「海上神幸」が有名です。
- 櫛田神社(福岡)
新年の「歳旦祭」や9月の秋季例祭で披露されます。
この他、全国各地の神社で祭礼の際に披露されます。きっと皆さんの地元でも見ることができると思います。
地元や、旅行先の神社のスケジュールを調べてみてはいかがでしょうか。
【まとめ】悠久の舞とは?
では、最後にまとめです。
- 悠久の舞とは明治時代に創作された「近代神楽」の一つで元々は「男舞」だった。
- その後「女舞」へと改作され、今の「巫女舞」となった。
- 現在、「靖国神社」や「太宰府天満宮」など様々な神社で祭礼の時に舞われている。
1300年のときを経て、現在も継承されている神楽舞。そのままの形だけでなく、新しい要素を取り入れ今なお進化しています。そのひとつが巫女の舞う「悠久の舞」なのです。
多くの神社で舞われているのは、その華麗さに今の私たちの心も魅せられている為なのでしょう。日本文化の歴史の深さを感じることのできる、悠久の舞をぜひ体感してみてください。
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